令和5年度施政方針

更新日:2024年02月22日

令和5年度施政方針

 令和5年第1回市議会定例会の初日(令和5年2月21日)に行われた令和5年度施政方針演説の内容です。

 本日、令和5年第1回市議会定例会が開会され、令和5年度当初予算案をはじめとする重要案件をご審議いただくにあたり、市政運営における理念や中長期的な方向性、令和5年度に取り組む施策等について申しあげます。

 (明るい未来への展望を切り拓(ひら)く一年に)
 私たちは今、様々な変化の波にさらされています。コロナ禍が長引いておりますが、医療や福祉の第一線の現場でご奮闘いただいているエッセンシャルワーカーの皆さまに感謝しつつ、その変化に適応し、しっかりと乗り越えていかねばなりません。また、経済指標は緩やかに回復しつつありますが、急速に進んでいる物価の高騰などについても、今後の状況を注視しつつ、適宜、適切な対応を講じていく必要があります。令和5年度が、これらの試練を乗り越え、明るい未来への展望を大きく切り拓(ひら)く一年となるよう、緊張感をもって各分野の施策に取り組んでまいります。

 (幸福感の向上をめざす)
 今、日本社会は65歳以上の人口割合が29%を超えてきており、75歳以上の人口は約2,000万人に達しようとしています。また、国を挙げて少子化に取り組む機運が高まっているものの、人口減少は避けられない状況にあり、GDPなどの全体規模を大きくすることが容易ではなくなりつつあります。そのような中、自治体としての中長期的な方向性に、“市民一人一人の幸福感の向上”を位置付けることが肝要であると考えております。昨年12月に実施した市民意識調査では、従来からの項目に加え、LWCI(Liveable Well-Being City Indicator)という市民の幸福感を測るための指標を取り入れました。今後、市民一人一人の幸福感の向上に相関性の高い因子や各分野の市民満足度等を分析し、施策の不断の見直しに取り組んでまいります。
 また、様々な取組を進めるにあたっては、SDGsの理念を踏まえながら、誰一人として取り残さない、インクルーシブな社会が実現できるよう、小さな声にもしっかりと耳を傾けてまいります。

 (加古川ならではの魅力づくりを)
 今後の中長期的な方向性としましては、加古川らしさを磨き、伸ばすための「加古川ならではの魅力づくり」をめざし、引き続き3つの柱を掲げて取り組んでまいります。
 一つ目は、「身近な自然を活(い)かした魅力づくり」です。JR加古川駅から歩いていくことができる加古川河川敷を活(い)かした「かわまちづくり」により、新たな賑わいと憩いの水辺空間の創出を進めてまいります。河川敷緑地でのイベント等の開催支援に加え、今後、堤防上への民間施設の誘致等をめざしたハード整備にも取り組んでまいります。また、見土呂フルーツパーク、権現総合公園、日岡山公園などの大型公園の再整備を着実に推し進め、本市の魅力を最大限に引き出してまいります。
 二つ目は、「駅周辺のにぎわいづくり」です。令和5年度を、JR加古川駅周辺の今後のビジョンを描き、市民の皆さまと共有していく出発の年にしたいと考えております。加古川駅周辺だけでなく、河川敷や近隣商業施設、商店街等も含めた、広く回遊できるウォーカブルな空間づくりをめざします。
 三つ目は、「産業誘致による雇用の創出」です。東播磨地域は、交通ネットワークが発達しており、産業用地として非常に優れた立地環境にあります。官民連携により開発を進めてきた野口町水足の戸ヶ池周辺地区については、すでに分譲が始まっておりますが、旧公設地方卸売市場の跡地や志方中央地区などにつきましても、産業用地としての活用を検討・調整してまいります。

 (社会の共通課題へのチャレンジ)
 私たちが直面している様々な社会課題は、全国の多くの自治体に共通しています。本市といたしましても、その課題解決に貢献できるよう、果敢にチャレンジしてまいります。
 国を挙げて進められているデジタル化につきましては、現在、デジタル田園都市国家構想推進交付金を活用し、高度化カメラの設置を進めております。引き続き、見守りカメラの更新や見守りサービスの充実、行政手続のオンライン化の推進、加古川市版Decidimの普及等にも率先して取り組み、スマートシティを推進してまいります。
 また、カーボンニュートラルにつきましても、市役所庁舎における照明のLED化、庁用車両の電気自動車への転換を進めるとともに、引き続き、省エネ家電への買替や充電ステーションの設置を支援しつつ、市民一人一人の行動変容を促せるよう、様々な啓発活動を展開してまいります。
 現在、国政においても一大課題となっている出生率の向上につきましても、財政の持続可能性を保ちつつ、子育て支援や教育環境のさらなる充実に全力で取り組んでまいります。

 (多様性と包摂性のある社会の実現)
 加古川市民全体としての幸福感の向上をめざす一方で、小さな声にもしっかりと向き合い、SDGsの理念でもある“誰一人取り残さない”温かい地域づくりに取り組みます。
 コロナ禍の影響もあり急増している不登校児童生徒への支援や、性の多様性の尊重、障がいがある方々への合理的配慮の推進や、各地域における人と人との繋がりを深める取組など、他自治体の先進事例に学びながら、積極的に取り組んでまいります。

 以上、今後の市政運営にあたっての理念や中長期的な方向性、関連する一部施策などについて申しあげました。ここからは、重複する部分もございますが、総合計画に掲げる5つの基本目標及びまちづくりの進め方に従い、順次、重点的な施策について述べさせていただきます。

1.【心豊かに暮らせるまち】

 一つ目に、「心豊かに暮らせるまち」についてです。
 結婚や出産・子育てをめぐる意識の変化や、様々な雇用形態がある中での経済的な不安定さなどを要因として、少子化がますます進行しています。子育て世代が将来の展望を描ける環境づくりは重要な課題であり、引き続き、少子化対策に全力で取り組んでまいります。
 まず、結婚を希望する若年世代を経済的に支援するため、令和5年度に結婚新生活支援事業の所得要件を緩和するとともに、夫婦共に
29歳以下の方への補助上限額を引き上げます。
 次に、子育て世代への支援につきましては、妊娠初期から安心して過ごしていただけるよう、子育て世代包括支援センターにおいて、出産前から出産・育児等の見通しを立てるための面談や状況に応じた支援を行う伴走型相談支援に取り組むとともに、妊婦の健康管理の充実と経済的負担の軽減を図っていくため、妊婦健康診査費の助成額を大幅に増額いたします。
 また、ファミリーサポートセンターについて、新生児を養育している方の負担軽減を図るため、利用の対象となる子どもの範囲を広げ、生後6か月未満も対象とし、出産後すぐからの育児サポートにつなげてまいります。さらに、令和5年4月1日以降に生まれた子どもを対象に育児サポート無料クーポン券を配付し、利用を促すことで、育児における養育者の孤立を防ぎ、安心して子育てができるまちづくりを進めてまいります。
 また、子どもにとって、家庭や学校に次ぐ第3の居場所として重要な役割を担う子ども食堂の活動を支援し、子どもが安心して過ごせる居場所を確保するとともに、子ども食堂や関係団体との連携強化や新たな担い手の発掘、食材提供体制の構築などを進めることで、子どもの育ちを支える地域の輪を一層広げてまいります。
 就学前の教育・保育につきましては、保育士の就業継続及び離職防止を図り、質の高い教育・保育を提供するため、清掃業務や園外活動時の見守りなど保育に係る周辺業務を行う保育支援者の配置を促し、保育士の業務負担を軽減するとともに、保育体制の強化を図ってまいります。
 加えて、保育中に体調不良となった園児に適切な対応ができるよう、保育所等への看護師配置を推進しているところです。新年度には公立こども園・保育園全園に看護師を配置し、安全・安心な保育環境を一層充実させてまいります。また、すべての子どもが健やかに成長できる環境を構築するため、引き続き医療的ケア児の受入体制の整備を図ってまいります。
 さらに、鳩里保育園、鳩里幼稚園及び加古川幼稚園を統合し、地域の子どもを保護者の就労状況で区分することなく柔軟に受け入れることができる認定こども園として、(仮称)加古川中央こども園を新たに設置することとし、その準備を進めてまいります。また、新設のこども園を市の就学前教育・保育施設の拠点と位置付け、公私や施設の種別を問わず、幼稚園教諭や保育士等の資質・能力の育成や、インクルーシブ教育・保育の推進など、保育環境の充実を図ってまいります。
 次に、義務教育の充実についてですが、本市が先駆的に取り組んできた協同的探究学習につきましては、「考える力」や自己肯定感の向上など、子どもたちに良い成果が表れているものと実感しています。今後、子どもたちの「わかる学力」のさらなる向上をめざし、これまでの研究成果を取りまとめた実践事例集を活用し、全校で質の高い授業を実践するとともに、本市を特徴付ける取組として、その成果を広く発信してまいります。
 また、デジタル技術を活用した先進的な教育の実践に向け、スマートスクール推進モデル校で培ったノウハウを全校に展開するとともに、各教室への光回線の導入を継続して進め、地域BWAとの相乗効果による、全国にも例を見ない高速通信環境を整備してまいりました。引き続き、デジタル教科書の活用についても積極的な研究を進め、効果的な授業づくりを進めるとともに、学習コンテンツ等も組み合わせ、時代に即した学習手法を確立してまいります。
 特に、英語教育につきましては、これまでのALT(外国語指導助手)の配置に加え、今年度から、1人1台端末を用いた学習コンテンツやオンライン英会話を導入し、さらに、中学3年生を対象に英語4技能を測定する外部検定試験を新たに実施いたしました。これらから得た客観的評価結果をもとに、授業改善と指導力の向上を図り、児童生徒の「使える英語」の育成に取り組んでまいります。
 次に、中学校部活動の地域移行につきましては、今年度から一部の学校でモデル実施し、円滑な実施に向けた課題の整理や効果的な手法の検証を進めてまいりました。新年度におきましては、対象とする部活動や中学校を広げるとともに、休日の部活動のあり方をさらに検討してまいります。
 いじめ防止対策につきましては、今年度をもって、いじめ防止対策改善基本5か年計画の期間が満了いたしますが、本市において、二度と子どもの尊い命が奪われることのないよう、引き続き未然防止や早期発見・早期対応に取り組んでまいります。これまでに構築してきた評価・検証のサイクルを徹底しながら、子どもたちの自己有用感や、自他の命と心を大切にする思いやりの心を育み、いじめ防止対策をさらに強固なものにしてまいります。
 次に、近年、不登校児童生徒数は増加傾向にあります。そのため、今年度は、教育相談センターが開設する、わかば教室について、サテライト教室を少年自然の家や平岡公民館で試行的に実施してまいりました。新年度におきましては、体験活動型の教室を少年自然の家で、学習支援型の教室を公民館で、頻度を増やして定期的に開催し、市内複数地域にわかば教室を展開することで、柔軟な支援体制を整え、不登校及び不登校傾向にある児童生徒の居場所や学習機会を確保し、社会的自立に向けた支援を充実してまいります。
 両荘みらい学園につきましては、教室棟や管理棟の整備を進めるほか、校章デザインの決定や本市にゆかりのある女性デュオ「花*花」さんの協力による校歌制作など、令和6年度の開校に向けた準備を着実に進めているところです。新年度におきましては、図書室棟や公民館棟の建設工事に取り掛かるとともに、校歌の完成や開校記念式典の準備などについて、開校準備委員会を中心に検討を進めてまいります。また、両荘みらい学園の図書室を地域へ開放するにあたり、専任の職員を配置し、望ましい図書の選定を行うとともに、児童生徒の学習活動を支援する体制を構築してまいります。
 学校施設の課題として、多くの小中学校でプールの老朽化が進んでおり、限られた使用期間でありながら、維持管理費用が高く、教員による衛生管理等も必要となり、その負担は少なくありません。新年度におきましては、水泳授業指導業務の委託により、民間プールの活用やインストラクターの派遣を試験的に実施し、児童生徒に対するきめ細やかな指導や教員の負担軽減を図るとともに、その実施結果をもとに、学校プールのあり方について方針を取りまとめてまいります。そのほか、学校園のトイレの洋式化についても計画的に取り組み、安心して快適に過ごせる学習環境の整備を進めてまいります。
 市内の児童クラブにつきましては、安定的な運営やサービスの質の向上をめざし、令和6年度から一部を民間委託により実施するための準備を進めてまいります。
 一方、生涯学習の充実につきましては、より多くの方に公民館をご利用いただけるよう、小学生や子育て世代など幅広い世代を対象とする魅力的な主催講座を東加古川公民館において試行的に実施いたします。また、地域活動団体や大学、民間企業などとの連携による講座を開催するなど、社会教育の一層の充実を図ってまいります。
 スポーツ・レクリエーション活動の推進につきましては、漕艇センターにおいて、今年度に引き続き加古川水域でメダリストを招いたカヌーイベントや体験会を開催し、レガッタはもとより、カヌーを通じて水辺の賑わいを創出してまいります。また、障がい者スポーツへの理解と普及促進を図るため、かこパラスポーツ王国をはじめとする障がい者スポーツの体験会や、パラリンピックの正式種目であり、年齢や障害の有無にかかわらず共に楽しむことができるボッチャの交流大会を開催いたします。そのほか、屋内ゲートボール場すぱーく加古川の利用の促進に向けた用途拡大や、ウェルネスパークの親水空間の復旧など、利用者の皆さまが安全・快適に施設をご利用いただくための整備も進めてまいります。
 文化・芸術の振興につきましては、今年度から、市内の高等学校等の吹奏楽部による「ウェルネスティーンズコンサート」の実施や、JR加古川駅構内への「駅ピアノ」の設置など、市民の皆さまが音楽に親しむまちづくりを進めてまいりました。新年度におきましては、新たに市内各所でのコンサートを実施するなど、身近に音楽と触れ合える機会のさらなる提供に努めてまいります。また、「棋士のまち加古川」としての認知度の向上と将棋文化の普及発展を図るため、若手プロ棋士の登竜門とされる「加古川青流戦」において、従来の決勝戦に加え、開幕戦やゆかりの棋士による対局の一部についても本市で実施いたします。さらに、多文化共生を推進するため、外国人住民への日本語学習支援や相談対応の充実などに継続して取り組むとともに、マリンガ市との姉妹都市提携50周年を記念した訪問団の派遣・受入を行うなど、国際親善及び国際交流事業の進展に努めてまいります。
 人権文化の確立につきましては、SNSの普及に伴い、インターネット上への悪質な書き込みなどの人権侵害が大きな問題となっています。新年度におきましては、悪質な差別書き込みや誹謗(ひぼう)中傷に対し、削除要請などの具体的な措置を早急に講じていくとともに、モニタリングを強化するなど、拡散防止と抑止効果を高め、一人一人の人間としての尊厳と基本的人権が尊重される社会の確立をめざしてまいります。
 また、性的指向・性自認・性表現というすべての人に関わる性のあり方(SOGIE:ソジー)は多様であることを尊重し、誰もが自分らしく生きることができるよう、新たに策定する「性の多様性の尊重に関する取組方針」に基づき、体系的に取り組んでまいります。新年度におきましては、LGBTQ+(エルジービーティーキュープラス)専門相談の実施や(仮称)パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度の導入、行政文書に係る性別記載欄の見直し、市職員はもとより、広く市民に正しい知識の普及啓発を図るなど、LGBTQ+の方々が抱える困難や生きづらさの解消につなげる取組を進めてまいります。

2.【安心して暮らせるまち】

 次に、「安心して暮らせるまち」についてです。
 地域福祉の充実をめざし、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らすことができるよう、生活支援体制の充実・強化に向けて「ささえあい協議会」の設置を順次進めてきており、令和4年度中に市内の全12地区で設置が完了いたします。引き続き、地域の方々を支える様々な関係者が地域課題や地域資源の情報を共有し、地域特性に応じた既存サービスの利用促進や新たなサービスの創出など、生活支援体制を拡充してまいります。また、乳幼児がいる生活困窮世帯に対し、エアコン等冷房器具の購入及び修理に要する費用の助成を開始することにより、熱中症による健康被害を防ぎ、健康を守るための住環境の確保について支援してまいります。
 次に、障がい者福祉につきましては、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段による情報保障を進めるため、市が発信する広報動画等の作成において、積極的に字幕や手話通訳のワイプを挿入することや、障がい者に対する合理的配慮の提供の義務化を見据え、民間事業者への周知啓発に努めてまいります。
 そして、高齢者福祉につきましては、住民主体の移動支援サービスを提供する、ささえあい協議会への支援を継続しつつ、他地区への横展開を図るとともに、自動車交通事故の防止及び被害の軽減に向けた安全運転サポート車の購入費補助を引き続き実施することで、高齢者の移動手段を確保し、安心して暮らし続けられるまちづくりを推進してまいります。また、一部地域では民間事業者との連携による食料品や日用品の移動販売の取組も進んでおり、引き続き実施地域を拡大してまいります。
 健康づくりや地域医療の充実に向けましては、女性特有の乳がん・子宮がん検診の受診年齢の整理や受診体制の拡大により、受診の習慣化を促し、受診率の向上を図ってまいります。また、加古川歯科保健センターにおいて、障がい者(児)診療の診療日及び健診日を拡大し、受診環境の充実を図ってまいります。
 次に、防災対策についてです。近年、台風や集中豪雨等の自然災害が大規模化・激甚化し、南海トラフ地震の発生についても切迫性が高い状態にある中で、市民の皆さまの生命と財産を守るための体制の構築が急務となっています。引き続き、町内会などへの出前講座を通じて市民の皆さまの防災に対する理解と関心を深め、地域の防災力の向上を図ってまいります。また、本年6月から本格稼働する新たな危機管理情報システムを有効に活用し、災害時における被害状況の収集や、迅速かつ的確な対応を行うとともに、平時においても防災ポータルサイトを通じた効果的な防災情報の発信に努めてまいります。
 消防・救急体制の充実につきましては、火災の発生を未然に防ぐため、市内の高等学校と連携し、住宅防火をはじめとした火災予防を推進してまいりました。市民の生命と財産を守るため、消防力の充実強化を図るとともに、関係機関と連携し、効果的な災害対応及び救急業務の実施に努めてまいります。
 防犯・交通安全対策といたしましては、見守りカメラ・見守りサービスのさらなる充実に取り組み、安全で安心できるまちづくりを推進してまいります。とりわけ、見守りカメラにつきましては、更新に合わせて、効果的な配置を再検討のうえ、必要に応じて移設し、適正に運用してまいります。さらに、このたび新たにAIを搭載した高度化カメラを設置し、従来の見守りカメラの機能に加えて、異常音や危険運転を検知し、回転灯やスピーカーを活用した注意喚起を行うことで、犯罪や交通事故の未然防止を図るとともに、収集した人流データを分析し、まちの賑わいづくりに活用してまいります。
 消費者保護対策につきましては、デジタル化の進展等に伴い詐欺の手口が巧妙化し、被害件数が増加しています。また、昨年4月に成年年齢が18歳に引き下げられ、若年者の消費者被害の拡大も懸念されることから、実践的な消費者教育の実施が課題となっています。安全安心な消費生活の実現に向け、若年者をはじめ、幅広い世代に伝わる効果的な消費者啓発に努めてまいります。

3.【活力とにぎわいのあるまち】

 次に、「活力とにぎわいのあるまち」についてです。
 原油や原材料の価格高騰により、市民生活や事業環境に大きな影響が生じています。今年度におきましても、様々な緊急経済対策を講じてまいりましたが、国や県とも連携しながら、必要に応じて補正予算を編成するなど、柔軟な対策を講じてまいります。
 一方で、冒頭にも触れました駅周辺の再整備等を見据えつつ、新たな賑わいづくりをめざし、商店街と地域が一体となって実施するイベントなどへの支援を行ってまいります。また、JR加古川駅及び東加古川駅周辺等を対象エリアとして実施してきました空き店舗等活用支援事業につきましては、補助対象に生活関連サービス業を加えるなど制度を拡充することで、新規出店を促進し、地域の商業・サービス業のさらなる活性化につなげてまいります。
 旧公設地方卸売市場の跡地につきましては、産業用地としての活用に向け、課題整理や事業者の募集に向けた検討を進めてまいります。
 観光振興につきましては、昨年10月、約3年ぶりの開催となった加古川まつり花火大会は、打ち上げ場所の分散など、新たな方法を取り入れたことで、市民の皆さまに安心して楽しんでいただくことができました。今年度のアンケートの結果等も生かしつつ、新年度におきましては、引き続き分散型での開催を軸に調整を進めてまいります。また、加古川観光協会とも連携し、新たなふるさと納税返礼品の開発など、本市の魅力発信に取り組むとともに、JR加古川駅構内のまち案内所兼市民ギャラリーでは、駅利用者や本市への来訪者に対して積極的に観光情報等を発信できるよう、レイアウトや案内表示などを見直しながら機能の充実を図り、市内外からのさらなる誘客を促進してまいります。
 農業につきましては、意欲ある農業者が農業を継続できる環境を整え、次世代を担う農業者の経済的支援や後継者の育成を図るため、農業用大型トラクターの免許取得に必要な費用の一部を助成するほか、地球温暖化防止や生物多様性の保全等に効果の高い営農活動に対して支援を行う環境保全型農業の取組を拡充してまいります。
 そして、本市の農業公園である見土呂フルーツパークにつきましては、本年8月頃から、段階的にリニューアルオープンいたします。市内外から多くの方が訪れる、魅力ある場所となるよう取り組んでまいります。

4.【快適なまち】

 次に、「快適なまち」についてです。
 全国と同様、本市におきましても、人口減少が急速に進んでいます。空き家・空き地の増加への対応はもとより、大規模化・激甚化する自然災害に備えた強靱性(きょうじんせい)の確保、脱炭素社会の構築に向けた環境負荷の低減、並びに先端的なデジタル技術の導入による社会課題の解決など、様々な観点からの持続可能なまちづくりが求められています。こうした中、本年4月に定める都市計画マスタープラン及び立地適正化計画に基づき、さらなる土地利用と必要な機能の誘導を図ってまいります。
 JR加古川駅周辺地区におきましては、駅南北のまちづくりの方向性を策定し、駅周辺において都心にふさわしい機能の配置案とともに、整備イメージ図や事業スケジュールの案をお示ししたところです。駅南の新たな複合施設には、図書館、子育て支援、商業機能などに加え、将来的に市民会館を移転することにより、さらなる賑わいの創出、周辺店舗などへの滞在、回遊性の向上などの波及効果をもたらしたいと考えております。また、あわせて駅南広場の再構築も検討しており、交通結節点としての機能のみならず、人中心の交流・滞留機能を持ち合わせた新たな空間づくりを行うことにより、本市の顔・玄関口としての魅力ある駅周辺の整備を進めてまいります。新年度には、再整備に関わる権利者の方々の意向把握が予定されており、その結果も踏まえながら、将来の再整備に向けた機運を着実に高めるとともに、加古川駅から河川敷を含む一帯のエリアについて、ウォーカブルなまちづくりに向けた将来ビジョンやエリア全体の価値向上に向けた公民連携のマネジメント手法について検討してまいります。また、駅南西地区におきましては、中心市街地の活性化や災害時における避難・消防活動等の機能確保を図るため、防災道路の西伸に向けた用地測量及び物件調査を進めてまいります。
 一方、副都心であるJR東加古川駅周辺におきましては、鉄道を高架化する連続立体交差事業について、引き続き、事業主体である兵庫県と協力し、踏切の除去等による新たな交通体系の構築に向けて設計・検討を進めてまいります。
 公共交通の満足度向上につきましては、近年、様々な取組を積み重ねてまいりました。引き続き、既存バス路線の維持に努めつつ、地域住民のニーズに応じたさらなる公共交通網の整備をめざし、新たに平荘地区にデマンドタクシー「チョイソコかこがわ」を導入するとともに、平岡北地区にかこバスミニを導入し、交通利便性の改善を図ってまいります。
 また、災害に強い都市基盤の整備につきましても、着実に取り組んでいかねばなりません。社会インフラを適切に維持するとともに、災害時の被害を最小限に食い止めるため、強靱化(きょうじんか)計画に基づき、必要な取組を推進してまいります。引き続き、雨水幹線の整備や排水路の改築に加え、市内水路の清掃や浚渫(しゅんせつ)作業等により流下能力の確保を図るとともに、老朽化した、ため池の改修にも計画的に取り組み、頻発化する豪雨による浸水被害の軽減を図ってまいります。また、主要河川の管理者である国や県、流域の市町と連携し、加古川水系全体での流域治水対策を進めるとともに、市民・事業者・行政が相互に連携・協力した取組により、災害に強くしなやかな地域社会の構築をめざしてまいります。
 幹線道路の整備につきましては、中心市街地に集中する交通量の効率的な分散に向けた取組を進めてまいりました、中環状線を形成する平野神野線及び中津水足線の工事が、いよいよ最終年度を迎え、新年度中には供用を開始する予定です。また、神吉中津線の橋梁(きょうりょう)部分につきましても、国との連携のもと、加古川左岸側における橋台整備に取り組んでまいります。国道2号線の加古川橋工区、平野工区及び寺家町工区につきましては、事業主体である兵庫県と共に、中心市街地における幹線道路ネットワークの整備及び交通インフラの強化を図ってまいります。さらに、道路整備に対する透明性を高めつつ、限られた財源の中で、計画的で効率的な道路整備を推進すべく、道路整備プログラムの策定を進めてまいります。一方、播磨臨海地域道路につきましては、昨年11月に国が調査したルート計画案が兵庫県、神戸市に手交されたところです。新年度は、このルート計画案を参考とし、兵庫県及び関係市町と連携しながら、都市計画手続に着手していくとともに、引き続き、道路整備に伴う新たな土地利用の方針等について検討を進めてまいります。
 市街化調整区域のまちづくりにつきましては、今年度、田園まちづくり制度を適用する地区において、子育て世帯や新規就農者も住宅建築が可能となるよう、建築許可の要件を緩和するとともに、移住・定住に向けた助成金制度を創設いたしました。新年度におきましては、モデル事業としての住宅団地の開発に向けた設計業務に取り組んでまいります。さらに、市街化調整区域の開発許可基準の見直しを行い、既存コミュニティの維持などの地域課題に対応してまいります。そのほか、三木鉄道跡地につきましては、地域住民との協議を重ね、整備方針を決定し、その詳細設計を進めてまいります。
 一方、冒頭にも申しあげましたが、“加古川ならでは”の魅力づくりの一環として、産業用地の創出を掲げています。これまで住宅用地として整備を検討してきた志方中央地区について、産業用地として整備する可能性を調査・検討してまいります。
 水道事業及び下水道事業につきましては、水道ビジョン及び下水道ビジョンに掲げる目標の実現に向け、厳しさを増す経営環境においても、中長期的な視点により、老朽化する施設の計画的な更新や耐震化を行い、安全で安心な上下水道を未来につなぐための経営を進めてまいります。水道事業におきましては、危機に強く安定供給ができる水道の構築を図るため、配水池や管路などの施設の耐震化に取り組み、強靱性(きょうじんせい)を高めてまいります。また、下水道事業におきましては、公共下水道の早期概成に向けて集中的に整備を進め、未普及地域の解消を図ってまいります。

5.【うるおいのあるまち】

 次に、「うるおいのあるまち」についてです。
 本市では、令和3年6月に気候非常事態宣言、さらに昨年2月には、2050年二酸化炭素実質排出ゼロをめざすゼロカーボンシティ宣言を表明しました。今や、地球温暖化に伴う気候変動への対策は、人類共通の課題であり、市民一人一人が真摯に向き合う必要があります。本市におきましても、第3次環境基本計画の見直しを行い、温室効果ガス排出量の新たな削減目標を含めたロードマップをお示しし、脱炭素社会の実現に向けた取組を力強く推進してまいります。
 新年度におきましては、電気自動車用充電ステーションのさらなる普及を図るため、引き続き、整備に係る費用について補助を行ってまいります。
 また、家庭部門へのアプローチとして、昨年12月より実施いたしました省エネ家電の買替補助を新年度も実施することで、脱炭素型ライフスタイルへの転換の後押しを行ってまいります。
 一方、事業者等へのアプローチとして、新たにゼロカーボンパートナーシップ制度を創設いたします。温室効果ガス排出量の削減に向けて主体的に取り組む事業者と協定を締結するとともに、当該事業者が所有する施設の省エネルギー化及び再生可能エネルギーの導入を支援することで、地球温暖化対策の機運を高め、産業部門及び業務部門の温室効果ガス排出量の削減を促進してまいります。
 市役所庁舎におきましても、トイレの洋式化を計画的に進めるとともに、太陽光発電設備の設置や照明設備のLED化により環境負荷の低減を図ってまいります。
 また、一般廃棄物の分野におきましては、現在、一般廃棄物処理基本計画の改定を進めております。市民の皆さまに対し、3Rの推進、特に、ごみを出さない「リデュース」や、ごみにしない「リユース」の視点を持って取り組んでいただくよう強く働きかけることで、環境意識のさらなる向上を図ってまいります。そのほか、民間事業者等と連携し、「てまえどり運動」など、食品ロスの削減につながる取組のさらなる普及を図り、SDGsの達成にも貢献してまいります。
 なお、環境分野以外にも関係するSDGsの普及及び理解促進に向けては、民間事業者による市オリジナルロゴマークの活用を促進するとともに、市役所庁舎内においても、SDGsの達成に資する各課の取組を窓口で発信するなど、取組の可視化を図ってまいります。
 次に、公共用水域の保全対策につきましては、し尿や浄化槽汚泥の受入施設である尾上処理工場について、令和6年度末の再整備完了に向け、計画的に建設工事を進めてまいります。
 水と緑の空間形成におきましては、重点施策として取り組んでいる「かわまちづくり」について、市民活動団体や民間事業者等との協働によるイベントが加古川河川敷で多数開催され、週末には市内外から多くの人が訪れ、新たな賑わい空間として定着しつつあります。また、加古川左岸堤防上においては、昨年9月から10月にかけて社会実験としてキッチンカーを集めたイベントを実施し、その結果として、賑わい交流拠点としての有効性や可能性があることが確認できました。新年度におきましては、官民協働によるイベントの継続的な実施により、さらなる機運醸成を図るとともに、昨年8月に国土交通省に登録された本市のかわまちづくり計画に基づき、国と市の役割分担のもと、河川敷や護岸、堤防等の施設整備を進めるなど、ハード・ソフトの両面から取組を推進してまいります。また、左岸堤防上の盛土予定地において賑わい交流拠点の整備・運営を担う民間事業者について、公募を行います。
 そのほか、大型公園につきましても、着実に再整備等の取組を進めてまいります。まず、権現総合公園につきましては、令和6年度末の完成をめざし、連絡路や公園予定地の造成に加え、大型遊具の設置やサイクリストの休憩施設などの整備工事を進めてまいります。そして、日岡山公園につきましては、引き続き、第1期事業に係る大型複合遊具設置エリア及びニュースポーツエリアの詳細設計を行うとともに、パークPFIの導入可能性調査の実施結果をもとに、整備事業者の選定に向けた準備を進めてまいります。また、快適に公園をご利用いただけるよう、トイレの大規模改修を実施してまいります。加えて、尾上公園につきましても、先行買収している一部の区域について、多目的グラウンドとしての測量及び設計を実施いたします。

6.【まちづくりの進め方】

 最後に、まちづくりの進め方に関係する項目について申しあげます。
 地域課題や市民ニーズがますます多様化する中、安全・安心で、活力ある地域社会を実現していくためには、行政だけでなく、市民、町内会・自治会や様々な市民活動団体、教育機関、企業など、多様な担い手がそれぞれの長所を発揮し合い、補い合う“協働”が不可欠です。新年度におきましては、協働のまちづくり推進事業補助金のテーマ設定型として、引き続き、「かわまちづくり」を設定するとともに、「デジタル技術を活用した市内での実証実験」を課題解決型のメニューに追加し、協働のまちづくりを一層進めてまいります。
 また、官民協働で実施しているウェルピーポイント制度につきましては、加盟店での支払金額の20パーセントをウェルピーポイントで還元するキャンペーンを実施するなど、利用者や加盟店の拡大を図ってまいりました。ボランティア活動や高齢者の健康づくりに関係する活動等のさらなる充実・拡大をめざし、今後も、ポイント付与対象事業の追加や利便性の向上を図ってまいります。
 次に、スマートシティ、デジタル化の取組についてです。これまで積極的に進めてまいりました、見守りカメラ・見守りサービス、地上デジタル放送波を利用したIPDC(Internet Protocol Data Cast)による災害情報の伝達手段、小中学校での地域BWAと光回線を用いた通信環境、加古川市版Decidimなど、デジタル技術を用いた様々な取組により、「スマートシティ」として全国から注目を集めるようになっています。今後も、スマートシティ構想に基づき、デジタル技術を活用し、生活の質や満足度の向上を図ることで、「市民中心の課題解決型スマートシティ」の実現をめざしてまいります。
 また、行政手続のオンライン化を進めているところであり、住民票の写し、戸籍謄本や抄本、所得・課税証明書の取得など、約400種類の手続をオンライン化しております。令和5年度末までには、約1,100種類にまで拡大してまいります。
 一方、証明書の交付申請や出生・死亡・転入転出・転居・婚姻などのライフイベントに係る来庁者の手続をスムーズに行うため、本人確認書類の提示と署名のみで手続が完了する「書かないワンストップ窓口」のさらなる充実を図ってまいります。
そして、本市の取組や地域の魅力をより多くの方に知っていただけるよう、シティプロモーションを積極的に取り組みます。これまでにも、各メディアへの露出獲得活動のほか、タイムリーな話題を特集したチラシの新聞折込、広報紙やSNSをはじめとする様々な媒体を活用した情報発信を行ってまいりました。新年度におきましては、動画の配信に力を入れるほか、シティプロモーションサポート企業とも連携しながら、より戦略的かつ効果的な情報発信を心がけてまいります。
 周辺市町と連携した広域的な視点も大切です。今年度、本市と歴史的にも地理的にも結びつきの強い高砂市、稲美町、播磨町とともに構成する東播臨海広域行政協議会は、発足後50年の節目を迎えました。「東はりま夜間休日応急診療センター」が令和3年11月に診療を開始し、昨年6月には広域ごみ処理施設「エコクリーンピアはりま」が本格稼働しております。今後も、スケールメリットを生かすなど、お互いの市町にとって効果的な取組を推進してまいります。

おわりに

 以上、市政運営における理念や中長期的な重点取組、新年度に予定する各分野の施策等について申し述べてまいりました。
 私たちを取り巻く環境が急速に変化していく中で、様々な課題が山積しておりますが、市民の皆さまの幸福感の向上をめざし、全力で取り組んでまいります。
 議員各位並びに市民の皆さまの一層のご理解、ご協力をお願い申しあげまして、令和5年度の施政方針といたします。

(注釈)当日の演説と表現その他に若干の違いがあることをご了承ください。

過去の施政方針

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