令和4年度施政方針

更新日:2023年02月22日

令和4年度施政方針

 令和4年第1回市議会定例会の初日(令和4年2月22日)に行われた令和4年度施政方針演説の内容です。

 本日、令和4年第1回市議会定例会が開会され、令和4年度当初予算案をはじめとする重要案件をご審議いただくにあたり、私の市政運営における理念や、めざす地域の将来像、各分野の施策の方針等について申しあげます。

(市政運営における理念)

 まず、市政運営における理念についてですが、私は、市民の皆さまが感じる幸福感の向上を最終的な目標として追求しています。各分野には様々な計画があり、目標等が設定されておりますが、それらはあくまでステップであり、一年一年、市民の皆さまが実感できる心の充足感、生活における満足感のさらなる向上をめざしてまいります。
 幸福感の増進には、様々なファクターが関係しておりますが、行政施策を通じて、多くの領域に関与することができると考えております。毎年度実施する市民意識調査も生かしつつ、新しい取組や継続事業の改善を通じて、お一人お一人により大きな幸せを実感していただけるよう、さらなる努力を重ねてまいります。
 一方で、全体的な数字だけではなく、各取組を進めるにあたっては、SDGsの理念を根本に据えながら、誰一人として取り残さない、インクルーシブな社会が実現できるよう、小さな声にもしっかりと耳を傾けてまいります。
 私達を取り巻く環境は、年々、急速に変化しています。全国の自治体が、多くの共通する課題を抱えています。市民の皆さまの声や、現場で実務を担う職員の感覚も生かしながら、社会の共通課題の解決に率先して取り組んでまいります。

(めざす地域の将来像)

 次に、めざす地域の将来像です。超高齢化が進む一方で、就職などを契機として若い世代が転出するなど、人口減少が進んでいます。
 本市は、神戸・大阪、姫路などの大きなまちに短時間でアクセスできる便利な場所でありながら、静かな住環境で、身近で自然を楽しむことができる地理的特性を有しています。また、東播磨地域における産業立地としてのニーズは非常に高く、さらなる雇用を創出・提供できる可能性を秘めています。これらの特性を生かすことにより、より多くの方に居住、ないし訪れていただけるまちへと進化させていきたいと考えています。

(当面の重点課題)

 当面の重点課題として、大きく3つ()げたいと思います。
 1つ目は、駅周辺への機能の集約化と市内の移動手段の改善です。まず、加古川駅周辺では、大型商業施設内に加古川図書館を移設しました。本年6月には、同施設内に、市役所周辺施設内にある貸室機能を集約した「加古川市民交流ひろば」や「マイナンバーカードセンター」を開設するとともに、男女共同参画センター及び国際交流センターを移転いたします。
 次に、東加古川駅周辺におきましても、長期的な取組となりますが、鉄道の高架化に合わせた駅周辺の再整備を進めることとしています。駅などの拠点となる空間の魅力を高めつつ、そこへのアクセスを改善することで、市全体としての魅力を高めてまいりたいと考えております。
 2つ目は、身近な自然を生かした魅力づくりです。現在、加古川河川敷において、かわまちづくりに取り組んでいます。今年度から、多くの市民団体の方々に楽しい大型イベント等を開催していただいております。今後、市民の声を最大限に生かしながら、加古川河川敷を新たな賑わいの拠点へと変貌させてまいります。加えて、日岡山公園や権現総合公園、見土呂フルーツパーク、加古川漕艇センター等の自然豊かな場所の魅力を高めることで、市内外から多くの人が集まる、楽しい空間を創りあげてまいります。
 3つ目は、しごとづくりです。事業所や工場の誘致に向けて、受け皿となる場所づくりに取り組み、さらなる雇用の創出をめざします。そのためにも、国や兵庫県とも連携し、必要な主要幹線や橋梁(きょうりょう)の整備、治水対策等を着実に進めてまいります。

(デジタル&グリーン 社会の共通課題の解決に貢献する)

 また、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を契機として、世界的に脱炭素社会への取組が急務となっております。国は、「2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、我が国は、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく。」と表明したNDC(Nationally Determined Contributions:国が決定する貢献)を国連に提出しました。本市としても、しっかりとその一翼を担わねばなりません。循環型社会の形成のため3Rの「推進や電気自動車の普及など、具体的な取組を進めてまいります。
 そして、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機として、デジタル化が国を()げての課題となっています。本市においては、見守りカメラ・見守りサービスの導入を皮切りに、行政手続のオンライン化や加古川市版Decidim等の導入を進めてきており、スマートシティの分野では国内外から注目を集める状況にまで至っております。引き続き、デジタル化の推進においては、先駆的なチャレンジを続けることで、市民の生活満足度の向上を図り、社会全体への貢献をめざします。

(誰一人取り残さない)

 次に、社会環境が大きく変化する中で、サポートを必要とする方が増えています。高齢者のみの世帯、障がいのある方々、日本語がうまく話せない外国人児童生徒等への支援や、性的指向・性自認・性表現(SOGIE)に関する理解を深めることなど、課題は多岐に渡ります。小さな声であっても、そこへしっかりと耳を傾け、誰一人取り残さない、温かい、インクルーシブな社会の実現をめざすべく、具体的な取組を講じてまいります。

(新型コロナ対策)

 現在、私たちは依然として、新型コロナウイルス感染症の第6波の渦中にあります。本市においても、今なお、入院中、自宅療養中の方がおられます。また、多くの方々が先行きの不透明感に困惑しておられます。
 令和4年度も、引き続き、3回目のワクチン接種を迅速に進めていくとともに、市民の皆さまや事業者の皆さまの将来不安を払拭すべく、様々な取組を柔軟に講じてまいります。長期間にわたり、現場の一線でご奮闘いただいております医療・福祉関係者の皆さまには、改めまして心より感謝を申しあげます。

 以上、私自身の市政運営にあたっての理念、めざす地域の将来像、今後、重点的に取り組んでまいりたい分野について申しあげました。ここからは、一部、重複する部分もございますが、総合計画に掲げる5つの基本目標及びまちづくりの進め方に従い、順次、重点的な施策についての方針を述べさせていただきます。

1.【心豊かに暮らせるまち】

 一つ目に、「心豊かに暮らせるまち」についてです。

 日本全体として少子化の克服が喫緊の課題となる中、本市では、結婚から子育てまでの切れ目のない支援に取り組んでまいります。新婚世帯に対して住宅取得費や引っ越し費用などを補助する結婚新生活支援事業を昨年に開始いたしました。令和4年度におきましては、リフォーム費用を対象に追加することで、結婚の希望を叶え、移住・定住をさらに促進し、社会全体で結婚を応援する機運を醸成してまいります。

 出産・子育ての支援につきましては、核家族化や晩婚化の進行に加え、コロナ禍による外出制限もあり、出産や育児に不安を感じたり、周囲から十分な支援を受けられない妊産婦が増加傾向にあります。人との接触の機会が減少している中で、妊産婦に対する適時適切な支援を行う必要があるため、子育て世代包括支援センターでのきめ細やかな相談や妊婦応援タクシー事業などを引き続き実施するとともに、退院後の母子に対して心身のケアや育児のサポートを行う産後ケア事業の利用環境の向上を図り、安心して出産・子育てができる体制を構築してまいります。また、不妊・不育症治療費につきましては、令和4年度から不妊治療が保険適用となりますが、自己負担額に応じた助成制度に見直したうえで継続し、男性の不妊治療を対象に加えることで、妊娠を希望する夫婦が揃って治療を受けることができるよう、引き続き、本市独自の支援策として実施してまいります。加えて、子育て世帯を医療面で継続的に支援するため、所得制限のないこども医療費の無料化の対象範囲を、高校生世代まで拡充するとともに、子どもの疾病予防、重症化の防止と感染症のまん延を防止するため、おたふくかぜワクチンに加えて三種混合ワクチンの任意予防接種に対する助成を行います。

 ひとり親家庭の子どもは、経済面で不安定な状況や、日頃から親と過ごす時間が限られ、家庭内での教育等が十分に行き届きにくい傾向があります。そのため、令和4年度におきましては、貧困の連鎖を防止する観点からも、ひとり親家庭の子どもに対し、基本的な学習習慣を身につけるための支援を行い、子どもの生活の質の向上を図ってまいります。

 就学前教育につきましては、幼児教育・保育の無償化等による保護者ニーズの変化などにより、認可保育所等への入園希望者が増加する一方で、加古川市立の幼稚園では、園児数が大きく減少し、小規模化が進むなど、幼児教育・保育を取り巻く環境は大きく変化しています。このような状況を踏まえて、本年1月、加古川市立幼稚園の今後のあり方についての方針を策定いたしました。本方針に基づき、望ましい集団規模の確保や業務等の見直しを進め、保護者ニーズに適した魅力ある就学前教育環境の再編を進めてまいります。

 次に、義務教育の充実についてですが、昨年5月の全国学力・学習状況調査によると、小学校における記述問題の無解答率が低くなってきており、本市が先駆的に導入した協同的探究学習の成果が少しずつ表れてきたと実感しました。そこで、これまでの取組を実践事例集としてまとめ、市内全学校で共有し、質の高い授業の拡充を図り、一丸となって児童生徒の「わかる学力」のさらなる向上をめざします。

 また、近年においては、デジタル技術の急速な進化、グローバル化の進展により、時代に応じた教育のあり方が求められています。昨年5月には、GIGAスクール構想に基づく、児童生徒1人1台のパソコン端末の配備が完了しました。これらのICT機器を活用し、小学校では学習コンテンツを用いて英語に触れる体験を、また中学校ではオンライン英会話を導入し、外国語指導助手(ALT)と掛け合わせ、「使える英語力」を確実に育成してまいります。そのほか、中学3年生を対象とした英語4技能を測定する民間検定試験の実施や国のデジタル教科書実証事業への参画により、授業改善と指導力の向上を図ります。

 一方、中学校の部活動では、教職員の働き方改革の推進と、生徒がより専門的な指導を受けられる環境を構築するため、休日においては地域に移行することを段階的に進めてまいります。まずは、地域部活動のモデルプランを試験的に導入して検証を行い、令和5年度からの段階的実施に向けた準備及び周知に努めてまいります。

 いじめ防止対策につきましては、二度と痛ましい事案を生まないため、平成30年度から「いじめ防止対策改善基本5か年計画」に基づき、未然防止や早期発見・早期対応に努めてまいりました。5か年計画の最終年度を迎え、取組を総括的に検証するとともに、引き続き教育委員会と各学校が密に連携し、いじめを見逃さない組織体制づくり、自分の気持ちを伝えることができる児童生徒の育成及び教職員の対応力の強化に、一丸となって取り組んでまいります。

 また、近年、不登校児童生徒は増加傾向にあります。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による休校、行事の中止やマスク着用での生活などの影響を受け、学校生活にうまく馴染むことができず、学校へ登校する気持ちになれなくなってしまっている児童生徒もいます。未来を担う子どもたちの心のサポートに取り組むため、中学校に配置しているメンタルサポーターを小学校にも試行的に配置するとともに、適応指導教室「わかば教室」を拡充いたします。

 加えて、日本語指導が必要な外国人児童生徒に対し、円滑なコミュニケーションと学校生活への適応や学習支援を図るため、児童生徒の実態に応じてサポート員の派遣期間を拡大するほか、音声翻訳機を小中学校に配備いたします。

 次に、かねてより検討を進めている両荘地区義務教育学校の設置につきましては、開校準備委員会を中心に教育内容や標準服、校章などの項目について検討しており、学校、家庭、地域が一丸となって準備を進めております。その名称につきましても、公募を行い、「加古川市立義務教育学校 両荘みらい学園」に決定したところです。今後は、令和6年度の開校に向けて建築工事を開始いたします。

 学校園の施設整備につきましては、トイレの洋式化率の向上をめざし、改修工事を計画的に実施し、子どもたちの学習環境の改善を進めます。

 生涯学習の推進につきましては、昨年10月に加古川駅南の大型商業施設内にリニューアルオープンした加古川図書館の来館者数が3か月間で13万人を超え、学習の拠点として多くの方にご利用いただいているところです。引き続き、指定管理者との協働のもと、調べものをサポートするレファレンスサービスの向上や魅力的な蔵書の充実に取り組み、ゆっくりとくつろげる読書空間の創出に努めてまいります。

 また、公民館においては、利用者が減少傾向にある中、子育て世代や青少年など幅広い年代の方々に親しんでいただける空間をめざし、地域コミュニティや大学などとの連携による講座やイベント、民間企業による社会教育に関する講座の開催など、新たな取組を行ってまいります。さらに、東加古川公民館と東加古川子育てプラザの複合施設「かこてらす」が本年4月にオープンを迎えます。複合施設ならではの施設間の連携による相乗効果により、多様な世代が集まり、交流する新たな賑わいの場としてまいります。

 スポーツ・レクリエーション活動の推進につきましては、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴うツバルやブラジルの選手等と市内小中学校の児童生徒との交流活動や、パラリンピック聖火フェスティバルの開催等を通じて、その感動を市民の皆さまとともに分かち合えたことが鮮明に思い出されます。今後も、スポーツを通じた楽しみや賑わいを引き続き感じていただけるよう、トップアスリートを招待したカヌーイベントや体験会を、規模を拡充して開催いたします。なお、漕艇センターでは、貸艇やトレーニング機器等の設備を充実させることにより、魅力や満足度を高め、利用者の増加を図り、一級河川加古川を感じていただく機会を増やしていきたいと考えています。

 文化・芸術につきましては、コロナ禍により、最も大きな影響を受けた分野の一つと言えます。その振興のためにも、より多くの市民の皆さまに関心を持っていただける環境づくりが必要です。たとえば、市内の中学校や高等学校の吹奏楽部は、毎年のように全国大会に出場するなど、非常に高いレベルにありますが、市民に対して披露する機会は多くありません。そのため、優秀な成績を収めた各校の吹奏楽部が一堂に会する演奏会を開催することにより、発表する機会を提供し、市民の皆さまが音楽に慣れ親しむまちづくりを推進してまいります。また、一般財団法人化する加古川市ウェルネス協会とともに、より機動的かつ柔軟に、スポーツや文化・芸術の振興に取り組んでまいります。

 一方、市内に居住する外国人は、近年、増加傾向にあり、多国籍化も進んでいます。このような中、日本人、外国人の区別なく、住民が安心して生活し、互いに支え、協力し合える社会の実現を目的として、「多文化共生社会推進指針」を策定し、異なる文化や考え方に対する理解の促進や、多様な言語、手段による情報提供、相談対応の充実などに取り組んでまいります。

 人権文化の確立につきましては、新型コロナウイルス感染症に関連した人権問題をはじめ、インターネットを通じた「心ない書き込み」や、性的指向を理由とする差別的取扱いなど、様々な事例が後を絶ちません。偏見や差別は絶対にあってはならないものであるという確固たる考え方のもと、誰一人取り残さない、インクルーシブな社会の実現に向けて、市民一人一人の人権意識を高める取組を一層進めてまいります。

 男女共同参画社会の形成につきましては、性別にかかわらず誰もが仕事・家庭・地域において、個性や能力を発揮できる環境の整備など、市民の皆さまが自分らしく、ともに生きられるまちの実現に向けて取組を進めてまいります。

 また、男女の別だけではない多様な性のあり方を認め合い、性的マイノリティの方々が、自分らしく生きることができる社会の実現に向け、調査研究を進めてまいります。

2.【安心して暮らせるまち】

 次に、「安心して暮らせるまち」についてです。

 安全・安心は、幸せを実感できるまちづくりを進めるうえで、最も基本的な土台とも言える部分です。

 まず、地域福祉の充実につきましては、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、町内会や民生委員、医療機関、教育機関、事業者等の協働による、住民一人一人のニーズに沿った支援が重要です。そのため、高齢者の生活支援体制の充実・強化を図ることを目的とした「ささえあい協議会」の設置を進めてまいりました。令和4年度は、陵南及び平岡南地区で新たに立ち上げ、全12地域でメンバーが知恵を出し合い、地域の特性に応じた生活支援サービスを充実させるとともに、優れた取組や有益な情報を共有し、全市的に展開していく仕組みを構築いたします。

 また、経済的な理由により、エアコンが設置できない家庭があります。近年は異常気象と言われ、夏場では記録的な気温となる日があり、熱中症の発症が心配されます。そのため、生活困窮世帯に対し、エアコン等の購入費を助成することで、健康を守るための住環境を整えてまいります。

 障がい者福祉につきましては、「第6期障害福祉計画」及び「第2期障害児福祉計画」に基づき、基幹相談支援センター等の関係機関と連携し、障害特性に応じた支援を引き続き提供するとともに、相談支援体制のさらなる充実を図ってまいります。

 さらには、昨年5月、「障害を理由とする差別の解消に関する法律」が改正され、国や自治体のみならず、民間事業者においても合理的配慮の提供が義務化されます。このような動きを受け、民間事業者に対し、制度の周知に努めてまいります。

 高齢者福祉につきましては、地域での暮らしを支えるため、必要な場面で必要な支援が届くなど様々な課題に応じた多角的な取組を行ってまいります。

 まず、自家用車等を持たない高齢者の移動手段の確保に向け、通院等の送迎サービスを提供するささえあい協議会を支援するとともに、一部の地域で定着している買い物支援の取組をさらに広げてまいります。また、高齢者が自動車を安全に運転できる環境を整備するため、65歳以上の方のセーフティ・サポートカー購入や所有車両へのペダル踏み間違い急発進抑制装置の取付けへの補助を行います。

 次に、介護サービスにつきましては、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを提供する事業所に対し、単独の訪問看護の介護報酬との差額を補助いたします。このことにより、既存事業者の経営の安定化や新規事業者の参入の促進を図り、在宅介護を支えるサービスを充実させることによって、介護が必要な高齢者が自宅で安心して暮らせる取組を進めてまいります。

 また、市民の皆さまが自ら健康づくりに取り組んでいただけるよう、スマートフォンアプリを活用した事業を実施いたします。幅広い年代の参加を促すとともに、プッシュ通知による定期的な情報発信を通じて、運動や食生活など健康づくりに対する意識の向上を図ってまいります。

 次に、防災対策についてです。総合防災マップの内容や災害に対する日頃からの備えの重要性を認識していただくため、町内会などへの出前講座を積極的に実施するとともに、感染症対策を踏まえた避難所運営のため、マニュアルの整備や各種衛生資材の調達を進めてまいりました。また、災害時の情報発信手段として地上デジタル放送波を利用したIPDC(Internet Protocol Data Cast)の導入を進めてまいりました。しかしながら、昨今の災害は、予想を超えて頻発化、激甚化しており、これまでの経験では対応しきれなくなっています。そこで、新たな危機管理システムを導入し、職員間のより迅速な情報共有と機動力の向上を図ります。また、市民向け防災ポータルサイトを開設し、平時からの防災意識の向上はもとより、災害時には各種ツールと連携した迅速な情報発信を行い、市民の生命と財産を守るための体制を構築いたします。

 消防・救急体制の充実につきましては、加古川東市民病院跡地において新たな加古川市東消防署の整備が完了いたします。市民生活の安全・安心を守るため、消防力の維持・強化を進めるとともに、医療機関と連携を密に図りながら、迅速かつ適切な救急搬送を行ってまいります。

 防犯・交通安全対策につきましては、昨年4月から、小学校へ入学する1年生に対して見守りサービスの利用に伴う費用の全額補助を実施しております。引き続き、制度の周知を行いながら、この取組の効果を検証するとともに、見守りサービスのさらなる普及に取り組んでまいります。

 消費者保護対策につきましては、オンラインでのやり取りが急速に増加する中、インターネット上での不確かな情報や悪質な勧誘等にさらされるリスクが高まっています。こうした不安や問題を解消し、安全安心な消費生活の実現に向け、民間事業者等と連携した啓発や正しい情報の周知に一層努めてまいります。

3.【活力とにぎわいのあるまち】

 次に、「活力とにぎわいのあるまち」についてです。

 現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済の先行きを見通すことは困難ではありますが、まちの活力とにぎわいを生みだすために、引き続き事業の継続や雇用の維持等を支援するとともに、働く場の創出を図る必要があります。

 本市では、「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、しごとづくりにフォーカスを当てた方向性を打ち出し、新たな産業用地の創出に向けて取り組んでいるところです。とりわけ、本年4月1日に廃止する公設地方卸売市場の跡地については、幹線道路に面した立地状況及び現状の用途地域にふさわしい産業系の土地利用を検討してまいります。

 また、商業・サービス業の振興につきましては、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済時にポイントを付与するキャンペーンを再び実施し、市内店舗を応援いたします。

 観光振興につきましては、大型イベントが相次いで中止を余儀なくされました。そのような中、加古川まつり花火大会については、多くの方々から再開を望む声をいただきました。安全性を最優先に、新型コロナウイルス感染症の感染状況を見極めつつ、安心して参加いただけるよう、従来の規模や形態にとらわれることなく実施に向けた取組を進めてまいります。また、本年4月に観光協会を一般社団法人化することにより、組織の専門化と自由度を高めることで、さらなる観光振興を図ってまいります。このほか、本市の観光資源の一つである高御位山につきましては、より多くの方に利用していただけるよう、新たな駐車場を整備し、市内外からの誘客を促進してまいります。

 一方、本市の農業公園である見土呂フルーツパークの再整備につきましては、懸案となっていましたが、リニューアルグランドオープンに向けて、着実に事業を進めてまいります。

4.【快適なまち】

 次に、「快適なまち」についてです。

 本格的な人口減少・少子高齢化が進み、また、様々な自然災害が頻発化・激甚化しています。そのような中、災害リスクを見据えつつ、地域の特性を踏まえた計画的な土地利用により、適切な機能の誘導と集積を図り、住みやすさと防災力を兼ね備えた持続可能なまちづくりを実現していく必要があります。

 JR加古川駅周辺につきましては、昨年10月に駅南の大型商業施設内にリニューアルオープンした加古川図書館に続き、市役所周辺施設の貸室機能を集約し、多様な主体の活動と交流の場を提供する「加古川市民交流ひろば」を開設するとともに、関連する事務所機能を移転いたします。施設内及び周辺の商業機能等との連携のもと、相乗効果を生み出し、多様な世代が集う、賑わいと魅力あふれる都市拠点の形成をめざしてまいります。さらに、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の実現に向け、河川敷から加古川駅周辺を一体と捉え、ウォーカブルなまちづくりや、駅南北の再整備を含めた検討を進めてまいります。また、駅南西地区におきましては、面的整備事業の推進に向けた地域の取組を支援しつつ、地区の防災性や回遊性の向上に資するよう、防災道路整備に向けた取組をできるだけ早期に進めてまいります。

 副都心であるJR東加古川駅周辺につきましては、踏切及び周辺道路の渋滞等の問題を解消するため、鉄道を高架化する連続立体交差事業の実現に向けて取り組んでいるところであり、引き続き都市計画手続に向けて、県及び鉄道事業者との協議を進めてまいります。

 地域の公共交通につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、取り巻く環境はますます厳しさを増しており、住民の意識や行動の変化等を踏まえた交通政策が求められています。今後も利用者の声を伺いながら、公共交通の充実に努めるとともに、公共交通の空白及び不便地域の解消、さらには生活利便性の向上に向けて、市域の公共交通網の再編について検討してまいります。

 災害に強い都市基盤の整備につきましては、地震をはじめとした災害発生時においても、市民の皆さまの生命や財産を守り、社会に必要な機能が維持されるよう、「加古川市強靱化計画」に基づき、防災施設等の整備だけでなく、訓練・防災教育等、ハード・ソフトの両面で取組を推進してまいります。特に、近年、頻発化する豪雨による浸水被害を軽減するため、雨水を速やかに排除する管路の骨格となる雨水幹線の整備や排水路の改築に加え、ため池を活用した雨水貯留機能の強化等を計画的に進めてまいります。また、主要河川の管理者である国や県、流域の市町とも連携しながら流域全体で雨水の流出を抑制するなど、総合的な治水対策である「流域治水」を進めるとともに、市民・事業者・行政が相互に連携・協力することにより、災害に対する強靱性の向上を図ってまいります。

 幹線道路の整備につきましては、平野神野線、中津水足線及び神吉中津線の早期完了に向けて、計画的かつ着実に事業を推進してまいります。また、本市中心部の東西交通の要である国道2号の4車線対面通行化につきましては、事業主体である兵庫県と密接に連携を図りながら、加古川橋梁(きょうりょう)の架け替えや平野工区、また、新たな寺家町工区を着実に進め、JR加古川駅を中心とする幹線道路ネットワークの整備及び交通インフラの強化を図ってまいります。さらに、東播磨道の延伸につきましても、八幡稲美ランプから国道175号までの北工区について、引き続き県との連携を密に図ってまいります。一方、播磨臨海地域道路につきましては、現在、県において環境影響評価の手続が進められ、国においては詳細ルート及び構造の検討が行われています。引き続き、早期の事業化に向けて、国及び県、関係市町と連携するとともに、道路整備に伴う新たな土地利用の方針等について検討を進めてまいります。

 田園まちづくり制度につきましては、運用開始から10年以上が経過しており、社会経済状況が変化する中、地域の実情やニーズに対応できないケースが生じております。そのため、より柔軟な運用ができるよう建築制限を緩和し、当該地域に子育て世帯や新規就農者も住宅建築が可能となるようにいたします。そのうえで、未利用の市有地を活用し、住宅団地に開発するモデル事業を立ち上げるほか、田園まちづくり地区に移住・定住を促進するための支援制度を創設いたします。

 また、三木鉄道跡地につきましては、地域住民の交通利便性の向上とJR加古川線の利用促進を図るため、道路整備に向けた調査に着手いたします。

 水道事業及び下水道事業につきましては、アセットマネジメントのもと、中長期的な視点により計画的に施設の改築、更新及び耐震化を行い、厳しさを増す経営環境の中においても、安全で安心な上下水道を未来につなぐための経営を進めてまいります。水道事業においては、昨年11月に水道水の濁りが発生し、地域の皆さまに多大なるご迷惑とご不便をおかけしました。今後、安全で良質な水道水を安定的に供給できるよう、再発防止に努めてまいります。また、下水道事業においては、公共下水道の早期概成に向けて、整備体制の強化を図り、未普及箇所の解消を進めてまいります。

5.【うるおいのあるまち】

 次に、「うるおいのあるまち」についてです。

 本市では昨年6月、気候非常事態宣言を表明いたしました。今や、地球温暖化に伴う気候変動は、人類共通の課題です。本市におきましても、再生可能エネルギーの利用を促進し、二酸化炭素の排出量を抑制する取組や、里山林の保全・活用を進めるなど、ゼロ・カーボンシティをめざした取組を強力に推し進める必要があります。

 まず、電気自動車の普及を促進します。市民の皆さまや事業者の皆さまが電気自動車等を購入する際の費用について支援する制度を創設し、市内に不足する充電ステーションについても、整備に係る費用について補助を開始します。そして、「かこてらす」では、本市が充電ステーションを整備し、皆さまが利用できるようにいたします。

 これらのことは、まだまだ小さな一歩ではありますが、2050年二酸化炭素排出量実質ゼロに向け、市民の皆さまに対し、脱炭素型ライフスタイルへの転換を促しつつ、環境先進都市をめざした取組を進めてまいります。

 次に、燃やすごみの減量についてですが、市民の皆さまや事業者の皆さまのご理解とご協力により、昨年12月末時点で、平成25年度比でおよそ25%減量と、目標値を大きく上回ることができました。引き続き、ごみ減量と循環型社会の構築を推進するため、「一般廃棄物処理基本計画」を改定いたします。加えて、ペットボトルの再生利用や「おいしい食べきり運動」による食品ロスの削減など、民間事業者と連携・協力した取組を推進し、SDGsの達成にも貢献してまいります。

 公共用水域の保全対策につきましては、し尿や浄化槽汚泥の受入施設である尾上処理工場の再整備について、設計、施工、運営を一括で発注する方式を採用し、事業者を決定したところです。令和6年度末の施設整備完了に向け、計画的に事業を進めてまいります。

 水と緑の空間形成におきましては、新たに重点施策として取り組んでいる「かわまちづくり」について、加古川河川敷を新たな賑わい拠点として活用するため、市民の皆さまのご意見やアイデアをお聴きするシンポジウムやワークショップの開催とともに、地域の代表者をはじめ、河川管理者、有識者、関係機関で構成するかわまちづくり協議会において、「かわまちづくり計画」の策定を進めてまいりました。令和4年度におきましては、「かわまちづくり計画」の登録をめざすとともに、官民協働による賑わい空間の創出を図るため、民間活用を見据えた賑わいづくり拠点整備に向けた事業手法等を検討することに加え、引き続き「かわまちづくり」の機運醸成と河川空間のオープン化に向けた取組を進めてまいります。

 また、権現総合公園については、NEXCO西日本との基本協定に基づき、大型遊具を備えたハイウェイ・オアシスとして、また、サイクリストの休憩所として、令和6年度末の完成をめざして整備を進めてまいります。さらに、日岡山公園再整備につきましては、子どもやその家族が安心して遊び、憩える空間と、近年盛り上がりを見せるニュースポーツを体験できるスポットを創り出すため、詳細設計に取り組みます。加えて、バリアフリー化とともに、誰もが利用しやすい衛生的な空間とする観点から、日岡山公園内のトイレ改修にも取り組んでまいります。また、民間事業者の誘致に向けたパークPFIの導入についても検討いたします。

6.【まちづくりの進め方】

 最後に、まちづくりの進め方についてです。

 多様な主体と行政との協働によるまちづくりにつきましては、協働のまちづくり推進事業補助金を活用し、子育て、教育、防災、福祉などの様々な分野において、課題解決に向けた市民活動団体等と行政の協働による取組が進んでいます。令和4年度におきましては、河川敷が市民の皆さまをはじめ、多くの方の日常を彩る魅力的な水辺空間となるよう、引き続きテーマ設定型は「加古川河川敷を活かした新たな賑わいづくり」にするとともに、補助金の総額を拡充し、取組をより一層充実させてまいります。

 また、ウェルピーポイント制度につきましては、シニアボランティアによる託児サービスをはじめ、地域や各分野の担い手の育成に向けたまちづくり活動などを対象事業に加え、制度を拡充いたします。さらに、ポイント付与の方式を現在のICカードからスマートフォンアプリに移行し、市民、事業者双方にとっての利便性の向上を図ることで、制度のさらなる普及拡大に努めてまいります。

 次に、市民の皆さまとともに戦争の悲惨さや平和の尊さを次世代に伝えていくため、かつての加古川飛行場の跡地に建つ尾上公民館において、同飛行場から飛び立った特攻隊の歴史や当時の人々の暮らしぶりなどをまとめた学習用パネルや、戦時中の様子を伝える貴重な資料の展示を行い、市民の皆さまが戦争や平和について学ぶ機会を創出してまいります。

 シティプロモーションの推進についてですが、本市の公式LINEのフォロワー数が本年1月時点で3万2千人を超えました。本市の取組や地域の魅力をより多くの方に知っていただくため、広報紙やSNSをはじめとする様々な媒体を活用した、きめ細かい情報発信を行うとともに、情報を広く市内外に発信するため、民間事業者のノウハウを活用した戦略的かつ効果的なメディア広報に取り組んでまいります。

 次に、効果的・効率的な行財政運営についてです。「公共施設等総合管理計画」に基づき、市役所周辺施設の再編に向けた取組を進めてまいります。また、市役所本庁舎につきましては、市民の皆さまが快適にご利用いただけるよう、トイレの洋式化を集中的に進めていくとともに、大雨等の異常気象の際にも、市役所の機能が停止することなく業務が継続できるよう、浸水対策を講じてまいります。

 また、本市では、昨年3月に策定した「スマートシティ構想」のもと、誰もが豊かさを享受できるスマートシティ加古川をめざし、多様な主体と連携した取組を進めております。その取組の一つである、加古川市版Decidimでは、かわまちづくりや健康づくりなど、取り扱う分野を広げることで、より多くの方にご参加いただき、活発な意見交換から多くのアイデアを生み出していただきました。今後は、対象テーマをさらに拡充し、市内にとどまらず全国の皆さまとともに、加古川の未来について考える場としてまいります。

 国を()げてデジタル化が推進されようとする中、本市におきましては、行政手続のオンライン化をはじめとした業務改革にも率先して取り組んでおります。昨年、スマートフォンとマイナンバーカードを利用した電子申請サービスを導入し、時間や場所にとらわれることなく、行政サービスを利用できる環境を構築いたしました。令和4年度におきましては、取得できる証明書の種類を拡充し、発行手数料を引き下げるほか、JR加古川駅南の大型商業施設内に「マイナンバーカードセンター」を設置し、取得にかかる市民の皆さまの利便性の向上を図り、電子申請サービスのさらなる利用を促進する環境を整備してまいります。加えて、来庁された方が紙の申請書等に記入する手間をなくし、職員がシステム上に直接入力することで、スムーズに手続が完了する「書かない窓口」の実現をめざします。

 広域的なまちづくりの推進につきましては、東播臨海広域行政協議会で協議を進めてきた「東はりま夜間休日応急診療センター」が昨年11月から診療を開始し、広域ごみ処理施設「エコクリーンピアはりま」は、令和4年度に稼働します。引き続き、協議会を構成する2市2町の共通課題の解決に向け、スケールメリットを生かした取組を進めてまいります。

おわりに

 以上、市政運営における理念やめざす地域の将来像、各分野の施策等を申し述べてまいりました。

 新型コロナウイルス感染症への対応は、いましばらく続くことが見込まれますが、感染拡大防止と収束に向けた取組について、スピード感を持って進めてまいります。

 一方で、苦しい状況にあっても、加古川市の明るい未来を切り(ひら)いていくため、中長期的な目線で、ソフト・ハードの両面における明日への投資に意欲的に取り組んでまいります。市民の皆さまや事業者の皆さまが、それぞれの夢と希望を描き、幸せを実感していただけるよう、様々な取組にチャレンジし続けてまいります。

 議員各位並びに市民の皆さまの一層のご理解、ご協力をお願い申しあげまして、令和4年度の施政方針といたします。

(注釈)当日の演説と表現その他に若干の違いがあることをご了承ください。

過去の施政方針

この記事に関するお問い合わせ先

担当課:企画広報課(本館4階)
郵便番号:675-8501
住所:加古川市加古川町北在家2000
電話番号:079-427-9113
ファックス番号:079-424-1370
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