令和3年度施政方針

更新日:2022年02月24日

令和3年度施政方針

 令和3年第1回市議会定例会の初日(令和3年2月24日)に行われた令和3年度施政方針演説の内容です。

 本日、令和3年第1回市議会定例会が開会され、令和3年度当初予算案をはじめ重要案件をご審議いただくにあたり、新年度における施政の方針を申しあげます。

はじめに

 

 世界が新型コロナウイルスの脅威と対峙()している今、私たちの生命を守るため、医療の最前線で奮闘されている医療従事者の皆さまをはじめ、私たちの暮らしに欠くことのできない業務に従事されているエッセンシャルワーカーの皆さま、また、感染拡大防止にご協力をいただいている市民の皆さま、事業者の皆さまに、心から敬意と感謝の気持ちを表します。行動変容を余儀なくされた日々の生活に思いを寄せる中で、行政の担うべき役割、市民の皆さまからの期待、そして何より、日常のささやかですが温かな幸せの尊さを、改めて、強く感じています。

 市制70周年の節目を越え、次の一歩を踏み出す本年。新たな総合計画のもと「夢と希望を描き 幸せを実感できるまち 加古川」の実現に向け、全力を尽くしてまいります。

 新型コロナウイルスのもたらす影響はまだまだ予断を許さず、先行きが不透明な状況が続いております。昨年は、特別定額給付金をはじめとした国、県の各種支援策に加え、本市独自の取組として、離職者への助成や、小売業・飲食店等の事業継続に向けた補助金の給付、大規模な消費喚起策、さらには臨時休校に伴う子育て世代の負担軽減など、様々な施策を展開してまいりました。新年度におきましても、地域医療施策の推進体制を強化する中で、ワクチン接種の着実な実施はもとより、状況に即した対策を適時適切に打ち出してまいります。

 そして、新しい生活様式を踏まえた、ICTの活用による利便性の高い行政サービスを市民の皆さまに実感していただけるよう、先駆的なものも含め、スマートシティの取組を加速させてまいります。

 また、本市の大きな課題の一つであります人口減少の抑制につきましても、「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、子育て施策のさらなる充実、働く場の創出、地域活力のさらなる向上に取り組みます。とりわけ、JR加古川駅からも近接した加古川の河川敷を含む水と緑あふれる空間を、新たなにぎわいの拠点とするための取組を進めてまいります。

 新型コロナウイルス感染症への対応が最重要課題となる中ではありますが、日常生活の多岐にわたる新たな総合計画を基礎としながら、人口減少の克服と地方創生の実現を主眼においた総合戦略の施策を効果的に展開することで、市民の皆さま、事業者の皆さま、そして本市に関係を持っていただいた皆さま一人一人が、より大きな幸せを実感していただくことができるよう、真摯に、時に大胆に市政運営を行ってまいります。

 それでは、総合計画に掲げる5つの基本目標及びまちづくりの進め方に従い、順次、重点的な施策についての方針を述べさせていただきます。

1.【心豊かに暮らせるまち】

 一つ目に、「心豊かに暮らせるまち」についてです。

 本市では、これまで、市内2箇所での子育て世代包括支援センターの開設や不妊・不育症治療費助成制度の拡充、待機児童の解消に向けた取組など、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援に力を入れてまいりました。しかしながら、全国的な傾向と同様に、婚姻数、出生数ともに年々減少しており、20歳から30歳代の若い世代の社会減と相まって、急速な人口減少が進んでおります。そのため、結婚・出産・子育ての支援としまして、結婚を含めた総合的な少子化対策に取り組んでまいります。

 まず、若い世代の結婚を応援し、安心して新しい生活をスタートしていただけるよう、新婚世帯の住宅取得費や賃借費及び引っ越し費用を補助する取組を開始いたします。

 出産の支援につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として取り組んでおります、妊産婦の方へのタクシー利用助成を継続して実施するとともに、多胎妊娠の場合の産婦人科受診に伴う経済的な負担を軽減するため、妊婦健康診査に係る費用の助成を拡充してまいります。また、先天性聴覚障害を早期に発見し、早期療育につなげることで、言語発達の遅れやコミュニケーションの支障を最小限にするため、新生児聴覚検査費の助成を新たに実施いたします。

 子育ての支援につきましては、短時間の就労やリフレッシュのためなど、ご家庭での育児における様々な事情やニーズに今まで以上に手厚く対応するため、現在、子育てプラザで実施しております託児サービスの利用料を無償化するとともに、実施頻度や定員枠を拡充いたします。

 就学前教育・保育の充実につきましては、これまで民間保育所等に対して保育士の確保に向けた就労一時金の支給や午睡チェックセンサーの導入に係る経費の補助を行ってきたほか、公立のすべての保育園及び認定こども園においても、ICTを活用した保育業務の効率化を進めてまいりました。新年度におきましては、公立園に登降園の時間管理や保護者とのコミュニケーションツールとなるシステムを新たに導入し、保育士及び保育教諭の職場環境の改善を図るとともに、子どもたちの安全と保護者の安心をより一層確保してまいります。加えて、保育施設の入所選考において、AIによる入所調整システムの導入に向けた取組にも着手してまいります。本市がめざすスマートシティの実現に向けた取組の一つとして、保育現場や入園手続きに係る業務の効率化を図ることで、子ども一人一人に寄り添った保育を進めてまいります。

 また、市内の公立幼稚園及び認定こども園幼稚園部のうち6園において、3歳児の受入を開始し、より早い段階からの発達や学びの連続性を重視した教育を進めるなど、魅力ある保育・教育環境の実現をめざしてまいります。

 次に、義務教育の充実についてです。本市の子どもたちが自分たちの力で未来を切り()いていくことができるよう、新たな教育大綱に沿って、教育委員会と力を合わせて教育施策に取り組んでまいります。

 新年度には、GIGAスクール構想に基づいた、児童生徒一人1台のパソコン端末配備や地域BWAを活用したネットワーク環境の構築、各教室への大型モニターの設置などが進み、ICTを活用した教育環境の整備が実現します。学習支援コンテンツの導入により、端末上で自分の考えをまとめて発表したり、個人の意見を瞬時にクラス全体に共有し、他者の考えに触れながら新たな答えを導き出したりするなど、授業方法がこれまでとは大きく変わってまいります。そのため、教員のICT活用能力の向上にも取り組みつつ、子どもたちが主体的に学ぶ姿勢を育んでまいります。さらに、長期休業期間など端末の持ち帰りによる自宅での個別学習についての検討も進めてまいります。

 「わかる学力」の向上をめざし、先駆的に進めております協同的探究学習につきましては、パイロット校である中部中学校において3年間の研究成果を発表したところです。これまでの成果を十分に生かし、「思考力・判断力・表現力」のさらなる向上に取り組むとともに、ICTの活用を組み合わせた相乗効果により、全市的な学びの充実を図ってまいります。

 また、いじめの防止対策につきましては、いじめは絶対に許されない行為であり、どの子どもにも、どの学校でも起こりうるという認識に立ち、「いじめ防止対策改善基本5か年計画」に基づく取組をしっかりと進めてまいります。

 予測困難な社会を主体的に生き抜く子どもの育成に向け、「社会に開かれた教育課程」、「地域との協働」及び「校種間の接続」が重要視される中、本市では、市内のすべての小・中・養護学校において、学校園連携ユニットを推進し、あわせてコミュニティ・スクール化を進めてまいりました。新年度におきましては、学校運営協議会を中心として、学校、家庭、地域が連携・協働し、まち全体で地域の将来を担う子どもの育成に取り組むなど、地域とともにある学校づくりを進めてまいります。

 また、昨年から検討を進めている両荘地区義務教育学校の設置につきましては、地域の方や学校関係者が参画する開校準備委員会等で協議を進めながら、校舎の増改築等に係る設計を行うなど、令和6年度からの開校に向け、必要な準備を進めてまいります。

 学校給食につきましては、本年9月には、未実施である4中学校へも神野台学校給食センターから配送を開始することにより、長年の課題でもあった全中学校での給食実施が実現いたします。日岡山学校給食センターとあわせて、安全で栄養バランスのとれた給食を提供し、生徒の心身の発達に寄与してまいります。そのほか、快適な教育環境のさらなる充実に向け、トイレの洋式化を計画的に推進いたします。

 また、すべての子どもが自主的な読書活動を通じて豊かな心を育み、生きる力を身につけることができる読書環境づくりに向けた取組を推進してまいります。

 スポーツ・レクリエーション活動の推進につきましては、スポーツの所管を教育委員会から市長部局に移管し、スポーツが持つ効果を健康づくりや余暇の充実、交流人口の増加につなげていくなど、他の施策との連携による相乗効果を十分に発揮してまいります。また、これまでのレガッタに加え、加古川の水辺のにぎわいを創出しつつ、水上スポーツの楽しさを感じていただくことができるよう、漕艇センター前の水域で、新たにカヌーのトップアスリートを招いたイベントや体験会を開催します。

 次に、文化・芸術活動の振興につきましては、将棋文化のさらなる定着を図るため、日本将棋連盟主催のNHK公開収録番組「第47回将棋の日」を誘致し、子どもたちが将棋にふれる機会を充実させるほか、こども将棋大会をはじめとした将棋に関するイベントの開催を通じて「棋士のまち加古川」の認知度の向上に取り組んでまいります。

 人権文化の確立につきましては、新型コロナウイルス感染症に関連した人権侵害に係る事例が全国で報告されています。自分や相手への矛先を誤った「新たな差別」を生まないことはもとより、すべての市民が正しい情報のもと、互いの理解を深め、尊重し合えるまちをめざして取り組んでまいります。

 また、性別にかかわりなく、仕事や家庭生活、地域活動などにおいて、その個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現に向けて、本年新たに開始する「第5次男女共同参画行動計画」に基づく取組を進めてまいります。

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が1年間の延期を経て開催されます。聖火リレーやパラリンピックの採火、機運醸成に向けた陸上教室や講演会の開催、そして、ツバルの陸上競技及びブラジルのシッティングバレーボール競技の事前合宿の受入など、各種事業の実施におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を徹底しつつ、万全の態勢で臨んでまいります。

2.【安心して暮らせるまち】

 次に、「安心して暮らせるまち」についてです。

 一人一人が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられることは、幸せを感じるための基盤であり、幸せを構成する大切な要素となります。また、新型コロナウイルス感染症をきっかけに生活様式や働き方が大きく変わってきている状況において、安心して暮らせるまちの実現に向けた取組は、より一層重要となっています。

 先般、国から新型コロナワクチンの接種に係る目的や体制等が示されましたが、本市といたしましても、市民の皆さまへのワクチン接種が可能となる体制の構築に向けて、関係機関と連携を図りながら、着実に準備を進めてまいります。 

 地域福祉につきましては、国において地域共生社会の実現に向けた取組を進めるとされている中、本市におきましても、様々な福祉課題を解決し、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、本年4月から開始する「第4期地域福祉計画」に基づき施策を展開してまいります。

 障がい者福祉につきましては、従前からの重点的課題である地域生活支援拠点等の充実を図るため、医療的ケアサービスを提供する放課後等デイサービス事業所、生活介護及び短期入所の施設を補助対象として、引き続き整備の促進を図ってまいります。さらに、兵庫県が構築する遠隔手話通訳サービスを導入することで、聴覚障がい者並びに登録手話通訳者の新型コロナウイルス感染予防及び安全確保を図るとともに、感染症の流行や災害時等においても、登録手話通訳者の派遣を実施できる体制の整備を進めてまいります。

 高齢者福祉につきましては、市内12地区での設置を進めておりますささえあい協議会において、民間事業者の皆さまの協力による買い物支援の取組が一部の地域で実現するなどの事例も生まれております。引き続き、地域の皆さまや事業者の皆さまとの協力のもと、各地域における課題解決に向けて取組を進めてまいります。また、昨年10月から開始しております、認知症により行方不明のおそれがある高齢者の方などを対象とした見守りサービスを利用する場合の費用の全額補助について、引き続き取り組んでまいります。

 介護保険事業につきましては、介護人材の確保及び離職防止に向けて、市内の訪問看護事業所、訪問介護事業所及び定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所に対して、警備保障会社のセキュリティシステムの導入に必要な経費の一部を補助してまいります。また、住み慣れた地域で大切な人の最期を()取ることができる体制の構築はより一層重要となっています。このため、兵庫県の補助金を活用しつつ、介護施設等における、看取り及び家族等の宿泊のための個室の確保を目的とした施設整備を促進してまいります。

 また、75歳以上の後期高齢者に対し、心身の活力低下や生活習慣病の重症化を予防するため、健診結果や医療受診状況から必要と判断した方への保健指導や、通いの場での健康教育等を行い、健康寿命の延伸を図ってまいります。

 健康及び医療分野につきましては、現在取組を進めるがんの予防や早期発見に加え、がん治療に伴う外見の悩みを抱える方に対し、ウィッグなどの医療用補整具の購入費用を助成し、がんとの共生による生活の質の向上を図ります。また、市民の方が骨髄等を提供するために仕事を休むことによる経済的不安を軽減するための助成制度を創設し、骨髄等移植の推進及びドナー登録者の増加を図ります。そのほか、国民健康保険事業につきましては、「データヘルス計画」に基づき、新たに、腎機能低下のおそれがある方を対象に、電話や訪問による保健指導や早期の受診勧奨を行うことで、市民の皆さまの健康の維持、改善につなげてまいります。

 次に、防災対策についてです。水害や地震災害に備え、警戒と対策を講じるため、昨年には総合防災マップの更新を行ってまいりました。そのような中、感染症の拡大予防にも配慮した避難所運営をはじめとした、複合災害への対応が大きな課題となっています。

 新年度には防災部を新設のうえ、防災監を配置することにより、様々な危機事象に対し、市関係部局はもとより、国、県をはじめとした関係機関との迅速かつ緊密な連携による危機管理体制のさらなる充実・強化を図ります。また、地域における支えあいを支援するため、町内会・自治会に加え、災害発生時に配慮が必要な福祉施設等において、防災士の配置に関する支援の対象を拡充するとともに、避難行動要支援者への対応についても継続して取り組んでまいります。

 消防・救急体制につきましても、大雨等の浸水被害による停電発生時において、119番通報の受信や災害出動時の無線交信に対応できるよう、現行非常用電源のバックアップ機能を確保するなど、消防力の維持・強化を進めてまいります。また、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、引き続き、医療機関との連携のもと、迅速かつ適切な救急搬送を行ってまいります。

 防犯・交通安全対策につきましては、見守りサービスのさらなる普及に向けて事業者と協働し、小学校へ入学する1年生のサービス利用に伴う費用を全額補助してまいります。

 消費者保護対策につきましては、国において「新しい生活様式」の実践例として通信販売の利用が示されている中、インターネット通販等に関するトラブルの増加が懸念されています。こうした状況に対し、消費者被害を未然に防止するため、特殊詐欺や消費者トラブルに関する注意情報などについて、出前講座や民間事業者との協定に基づく啓発活動などの展開を図ることにより、正確かつ漏れなく情報を発信するとともに、市民の皆さまに広く情報が伝わるよう取り組んでまいります。

3.【活力とにぎわいのあるまち】

 次に、「活力とにぎわいのあるまち」についてです。

 活力とにぎわいを生み出すためには、若者等の就労支援や企業誘致に取り組むなど、市内で働く場を創出することに加え、魅力ある地域資源を生かし、新たな人の流れをつくることで、交流人口や関係人口の増加につなげていくことが重要です。

 まず、働く場の創出についてですが、これまで取組を進めてまいりました野口町の水足戸ヶ池周辺地区に続く、新たな可能性についての調査を今年度に実施いたしました。新年度におきましても引き続き、調査結果を踏まえ、産業用地の創出に向けた取組を進めてまいります。また、本議会に提案しております「加古川市工場立地法地域準則条例」により、緑地面積率等の制限を緩和し、企業の進出や設備投資を促すほか、地元起業家の育成と新規事業の創出による地域の活性化をめざし、ビジネスプランコンテストを開催してまいります。

 新たな人の流れをつくる取組につきましては、河川敷を新たなにぎわいの拠点として活用する中で、誰もが楽しむことのできるイルミネーションイベントを開催してまいります。加えて、フォトセッションツアーとして、情報発信力の高い人に公共施設を撮影場所として提供し、参加者に写真や動画をSNSで発信いただくことで、これまでと違った視点での本市の魅力を全国にPRしてまいります。また、見土呂フルーツパークにつきましては、市民の皆さまはもとより、県内外から多くの方々が来園し、自然を身近に体験できる上質な観光拠点の形成に向けて取り組んでいるところです。本年3月には、再整備及び運営事業に係る優先交渉権者を選定し、令和5年のリニューアルオープンをめざした取組を本格的に進めてまいります。

 農業の振興につきましては、引き続き、有害鳥獣対策を進めるとともに、地元産食材への理解を深め、地産地消を推進するため、「加古川パスタ」や「加古川和牛」などのさらなる普及促進に取り組んでまいります。

 商業・サービス業の活性化につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により先行きが不透明な状況の中、市内での消費を喚起するため、今年度実施いたしました民間事業者との連携によるポイント還元キャンペーンを適切な時期を見極めながら実施いたします。

 本市のふるさと納税につきましては、市内事業者の皆さまのご協力のもと、魅力ある記念品の数々を効果的に発信することで、全国の皆さまに本市を知っていただく非常によい機会となっています。新年度には、記念品の充実や、利用者の利便性の向上を図ることで、さらなる寄附の獲得につなげるとともに、ふるさと納税をきっかけとした関係人口の増加につなげてまいります。

4.【快適なまち】

 次に、「快適なまち」についてです。

 本格的な人口減少・少子高齢化が進む中、地域の特性を踏まえた計画的な土地利用により、適切な機能の誘導と集積を図り、持続可能なまちづくりを実現していく必要があります。

 とりわけ、本市の都心であるJR加古川駅周辺につきましては、これまで集積された都市機能を生かしつつ、多様な世代が集い、過ごすことができる、にぎわいと魅力あふれる都市拠点の形成をめざしてまいります。この秋には、加古川図書館が駅南の大型商業施設内に移転し、指定管理者制度の導入により民間活力を取り入れた姿でリニューアルオープンする予定です。学習・ワークスペースをあわせて整備するほか、本庁舎周辺施設の貸館機能や行政機能の一部の移転・集約化も進めることで、施設内の商業機能等との連携による相乗効果を生み出し、利便性の向上を図るとともに、様々な世代が行き交う空間の創出につなげてまいります。なお、駅北側の公有地の利活用につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により事業を一時見合わせている状況となっておりますが、民間事業者によるマンション建設が進むなど、周辺環境に動きが出てきております。引き続き、駅南北のさらなる活性化をめざした検討を進めてまいります。また、駅南西地区におきましては、住民主体のまちづくり活動を積極的に支援するとともに、当地区の防災性や回遊性の向上により商業地としてのにぎわいの創出を図るため、防災道路の予備設計に着手してまいります。

 副都心であるJR東加古川駅周辺につきましては、踏切及び周辺道路の渋滞等の問題を解消するため、鉄道の高架化を図る連続立体交差事業の実現に向けた取組として、駅周辺のめざすべきまちづくりの方向性を検討し、県及び鉄道事業者との緊密な連携のもと、駅前広場の基本設計や側道道路の予備設計を進めてまいります。

 公共交通につきましては、新型コロナウイルス感染症も影響し、全国的に利用者の減少が加速するなど、地域の公共交通を取り巻く環境は厳しさがさらに増しており、社会情勢の変化や地域の移動需要に対応した細やかな交通政策が求められています。そのような中、昨年に「かこバス」ルートの増設・再編や加古川以西における「かこバスミニ」の新たなルートの導入に取り組み、そして今月には「かこバスミニ」の平岡東ルートの運行を開始したところです。今後も変化の激しい社会情勢に対応していきながら、引き続き、生活利便性の向上や公共交通網の充実に取り組んでまいります。また、本年1月には、八幡町において、電話予約により自宅周辺から目的地までを乗り合いにより送迎するデマンドタクシー「チョイソコかこがわ」の実証実験を開始いたしました。この取組は公共交通の空白及び不便地域の解消に向けた一助になると考えており、結果を踏まえ、新たな公共交通のあり方を検討してまいります。

 災害に強い都市基盤の整備につきましては、事前防災・減災や迅速な復旧・復興を目的に策定した「加古川市強靱化計画」に基づき、取組を進めてまいります。とりわけ、浸水被害の解消、軽減を図るため、新たな雨水幹線の整備や排水路の改築等を着実に実施してまいります。また、主要河川の管理者である国や県、そして、流域の市町と連携し、加古川水系全体での流域治水対策を進めるとともに、市民の皆さまと事業者の皆さま、行政が相互に連携・協力した取組により、災害に強いまちづくりを実現してまいります。

 幹線道路の整備につきましては、平野神野線、中津水足線及び神吉中津線の早期完了に向けて、現在、神吉中津線の新橋梁()の着工に至っており、今後も引き続き、計画的かつ着実に事業を推進してまいります。また、本市中心部の東西交通の要である国道2号線の4車線対面通行化につきましては、地域の皆さまはもとより、事業者の皆さまからも早期実現に向けた強い期待が寄せられております。本市といたしましても、事業主体である兵庫県と密接に連携を図りながら、加古川橋梁の架け替えや平野工区の整備などを進めているところですが、新年度におきましては、寺家町工区の新規事業着手に向けて取り組み、JR加古川駅を中心とする幹線道路ネットワークの整備を図ってまいります。さらに、東播磨道の延伸につきましても、八幡稲美ランプから国道175号までの北工区について、今後も県との連携を密に図ってまいります。一方、播磨臨海地域道路につきましては、昨年、国から内陸・加古川ルート帯が選定され、現在、国において詳細ルート及び構造の検討が行われている段階です。道路整備に伴う環境変化をまちづくりの好機と捉え、新たな土地利用の方針等について検討を進めてまいります。

 JR日岡駅については、日岡山公園周辺地区の玄関口として、現駅舎を活用した改修に係る実施設計を進め、リニューアルに向けて着実に取組を進めてまいります。

 水道事業及び下水道事業につきましては、危機に強く安全で安心な上下水道の構築を図るとともに、アセットマネジメントを取り入れた中長期的な視点での経営を進めてまいります。水道事業では、中西条浄水場など重要施設の更新や耐震化を進めるとともに、老朽化が進む水道管について計画的に更新してまいります。また、下水道事業では、公共下水道整備区域内の未普及エリアの早期解消に向けて、官民連携手法を活用しながら、取組を進めてまいります。

5.【うるおいのあるまち】

 次に、「うるおいのあるまち」についてです。

 地域の環境保全や、資源の循環と環境美化の推進、水と緑の空間の形成をめざし、本年3月策定予定の「第3次環境基本計画」に基づき、市民の皆さま、事業者の皆さま、行政が一体となり、持続可能な社会の実現や、いきいきと成長できる未来の環境の創造に向けた取組を推進してまいります。とりわけ、地球温暖化対策は人類共通の課題として取り組まなければならない喫緊の課題であり、本市といたしましても「気候非常事態宣言」の表明について検討してまいります。

 燃やすごみの減量につきましては、皆さまのご理解とご協力により、本年1月末時点では、平成25年度比で25.3%の減量となっています。今後もより一層のごみ減量をめざし、昨年12月から試行しております、家庭から出る燃やすごみを対象とする指定ごみ袋制度を、本年6月から完全実施してまいります。また、食品ロスの削減につきましては、引き続き「加古川市おいしい食べきり運動」を実施するなど、循環型社会の形成に向けた取組を継続して進めてまいります。

 さらに、新たな取組として、民間事業者の協力のもと、加古川市、高砂市、稲美町、播磨町から排出される使用済みペットボトルを新しいペットボトルに再生する「ボトルtoボトルリサイクル事業」に2市2町で連携して取り組むことなどにより、SDGsの達成に努めてまいります。

 環境美化の推進につきましては、新たに飼い主のいない猫の不妊・去勢手術費用を補助することで、繁殖の抑制や適正な飼育を促し、ふん尿被害の防止を図ってまいります。また、人口減少社会において全国的に空き地が増え、土地所有者の管理不全が問題となる中、雑草等が繁茂している空き地に対し、立入調査や指導を通じて、これまで以上に適正な管理を促すことで、地域の良好な生活環境の保全及び市民の皆さまの安全・安心な暮らしの確保につなげてまいります。

 公共用水域の保全対策につきましては、公共下水道整備区域を除く地域における合併処理浄化槽のさらなる普及及び管理の促進を積極的に啓発するとともに、し尿や浄化槽汚泥の受入施設である尾上処理工場の再整備に向け、確実に事業を進めてまいります。

 水と緑の空間形成につきましては、本市のシンボルである加古川のさらなる利活用の促進と魅力の向上を図り、JR加古川駅から河川敷にいたる空間に、うるおいとやすらぎを感じることができる新たなにぎわいを創出するプロジェクトを進めてまいります。また、権現総合公園については、NEXCO西日本と「権現湖ハイウェイ・オアシス事業に関する基本協定」の見直しに向けた協議を行いつつ、令和6年度の供用開始をめざして取り組んでまいります。

6.【まちづくりの進め方】

 最後に、まちづくりの進め方についてです。

 多様な主体と行政との協働によるまちづくりを進めていくために、行政をはじめ、市民の皆さまや事業者の皆さまなど、多様な主体がともに地域の課題を捉え、考え、共有し、それぞれの役割や特性を生かしつつ、一体となって課題解決やまちの将来像の実現に向けて取り組むことが大切です。新年度におきましては、市民の皆さまの活動の輪がより一層広がるよう、ウェルピーポイント制度を拡充し、ボランティア活動における対象分野を拡大するほか、環境活動やまちづくり活動への参加についても対象としてまいります。さらに、協働のまちづくり推進事業補助金につきましては、従来の補助対象に加え、河川敷を活用したにぎわいづくりを「テーマ設定型」として、また、市の総合計画に合致する事業を「課題解決型」として新たに補助対象とすることで、市民活動のさらなる活性化を図るとともに、市民の皆さまや事業者の皆さまとの協働のまちづくりを推進してまいります。

 次に、シティプロモーションの推進につきましては、市民の皆さまに本市への愛着や定住意向を高めていただくため、SNSのさらなる活用や民間事業者のノウハウを取り入れた情報発信を進めるなど、戦略的かつ効果的なシティプロモーションに取り組んでまいります。

 また、ポストコロナ社会を見据え、デジタル行政を推進することはもとより、市民生活の質の向上を図るため、ICTを活用したスマートシティの取組をさらに推進してまいります。本年3月策定予定の「スマートシティ構想」における検討の際には、民間事業者と協働した全国初の取組である、市民参加型合意形成プラットフォーム「加古川市版Decidim」の活用により、多くの方々から様々なアイデアや意見が寄せられ、活発な意見交換を行うことができました。新年度におきましては、Decidimの活用を他の分野にも展開するなど、より一層、市民の皆さまの意見や提案を取り入れ、市政運営に生かしてしてまいります。

 一方、3密の回避や外出の自粛が求められる中、本市では、特別定額給付金の申請において加古川市版オンライン申請方式を採用したことで、全国的な注目を集めることとなりました。新年度におきましては、他の申請手続きにおいても積極的に郵送とオンラインを掛け合わせたハイブリッド方式の活用を検討するとともに、行政手続きにおけるオンライン化をはじめとした業務改革にも着手してまいります。

 まず、市民の方がお亡くなりになった際の様々な行政手続きについて、ご遺族の負担軽減を図るため、手続きの抽出をはじめ、申請書等の作成補助や受付を行う「ご遺族サポートコーナー」を本年3月から開設いたします。加えて、市役所に来庁される際に、窓口の混雑状況を確認できるシステムを導入し、待ち時間の削減を図ってまいります。また、スマートフォンアプリを利用して時間と場所の制約を受けずに税や料金等の納付ができる環境を整備するほか、窓口においても、キャッシュレス決済による証明書発行手数料等の支払いを可能とするなど、利便性の向上を図ってまいります。さらに、転入・転居や結婚・出産などに際し、必要書類や持ち物などを案内する手続きガイドや、スマートフォンとマイナンバーカードを利用した電子申請サービスの導入に向けた取組も進めてまいります。職員のデジタル技術活用能力の向上を図りながら、創意工夫とICTにより窓口業務の改革を実現することで、本市がめざすスマートシティの取組を市民の皆さまに実感していただけると考えております。

 公共施設等の管理につきましては、「統廃合・複合化」の視点を踏まえ、JR加古川駅南の大型商業施設に一部の機能を移転・集約する取組を進めているところです。また、加古川東市民病院跡地においては、公民館と子育てプラザの複合施設及び消防署の整備に向け、建設工事が本格化しています。子どもや子育て世代から高齢者までの多様な世代が集う場であり、かつ消防士の日常的な訓練風景を間近で見ることができる場という特色も生かした魅力的なソフト事業の展開をあわせて検討しながら、令和4年度の開設に向け、着実に準備を進めてまいります。

 広域的なまちづくりの推進につきましては、本市とともに東播臨海広域行政協議会を構成する高砂市、稲美町、播磨町と引き続き連携を図ってまいります。とりわけ、本年11月に新しく整備される「東はりま夜間休日応急診療センター」につきましては、夜間のみならず休日昼間における診療窓口を、医療機関の持ち回りではなく、定点化することで、皆さまが利用しやすい救急医療体制を整えてまいります。また、「東播臨海広域クリーンセンター」につきましては、建設工事が順調に進んでおり、令和4年4月の本格稼働に向けて、本年11月から試運転を始める予定です。

おわりに

 以上、令和3年度の市政運営の方針と基本的な考え方を申し述べてまいりました。今、私たちの生活は大きく変わろうとしています。その変化に対してチャレンジし続けることで、新たな活路が切り()けると信じております。市民の皆さま、事業者の皆さまと、総合計画に掲げる「ひと・まち・自然を大切にし ともにささえ はぐくむまちづくり」の理念を心に、「夢と希望を描き 幸せを実感できるまち 加古川」の実現、ひいてはSDGsの達成に向け、全力で取り組んでまいります。議員各位並びに市民の皆さまの一層のご理解、ご協力をお願い申しあげまして、令和3年度の施政方針といたします。

(注釈)当日の演説と表現その他に若干の違いがあることをご了承ください。

過去の施政方針

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