令和2年度施政方針

更新日:2021年02月24日

 令和2年第1回市議会定例会の初日(令和2年2月26日)に行われた令和2年度施政方針演説の内容です。

 本日、令和2年第1回市議会定例会が開会され、令和2年度当初予算案をはじめ重要案件をご審議いただくにあたり、新年度における施政の方針を申しあげます。

はじめに

 水と緑に恵まれた私たちのまちが、加古川市としての歩みをはじめて70年。半世紀前に市内を駆け抜けた聖火が再びやってまいります。昭和、平成の時を経て、令和につながれた本市の歴史を聖火に重ねて振り返りながら、その先に輝く未来へ向けて、大きな夢と希望を、市民の皆さまとともに思い描いていきたいと考えております。

 国際社会では、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)が採択されており、SDGsの達成に向け、経済、社会、環境の3つの側面を、調和のとれた形で発展・改善させていくことが求められています。

 変化の激しい時代においては、次々と新しい社会課題が生じてまいりますが、それら一つ一つに、将来世代が必要とする資産を損なうことなく、適切に対処していく必要があります。

 また、日本社会においては、人口減少や高齢化が進んでおり、厳しい財政状況の中で、それらの課題にどう対処していくのかが世界各国から注目されています。

 そのような中、市民の皆さまからいただく様々なお声をもとにして、先駆的な取組にも果敢にチャレンジしつつ、新しい幸せのカタチや課題の解決方法を発信していきたいと考えております。

 本市も、急速な人口減少に直面しておりますが、人口の多寡以上に、市民の皆さま一人一人がより幸せを実感できるようにすることこそが肝要であると考えております。昨年12月に実施した市民意識調査では、施策に対する満足度や取組の認知度だけでなく、定住意向についても数値が上昇するという、明るい兆しが見えてまいりました。この結果を励みに、引き続き、市民の皆さま一人一人の生活満足度や幸福感のさらなる向上をめざしてまいります。

市制70周年・東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて

 本年は、市制70周年の節目を迎える年であると同時に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される年でもあります。この記念すべき年に、「かこがわの未来へおもいをつなごう」をメインテーマとした様々な事業を展開してまいります。

 具体的には、本市の歴史を振り返る特別展示の開催や、まちの魅力を再発見する観光冊子の作成。新たな産業の創出に向けたビジネスプランコンテストや、先端技術に触れることで未来を体感できる「未来博」の開催。そのほか、市民の皆さまや事業者の皆さまと一緒に実施する様々なイベントを通して、本市の魅力を共有し、ふるさとへの愛着と誇りを深める機会とするとともに、未来へ向けて明るさや希望が感じられる、有意義な一年にしてまいりたいと考えております。

 また、オリンピックの聖火リレー、パラリンピックの聖火フェスティバルを通じて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への機運の醸成を図ってまいります。7月にはツバルの陸上競技の選手団が、8月にはブラジルのシッティングバレーボールの選手団が加古川市内で事前合宿を行う予定であり、両国のホストタウンとして、全市を挙げておもてなしすることで、スポーツを通じた国際交流に加えて、環境問題や共生社会について考える絶好の機会とするため、各取組を充実させてまいります。

 節目の年にあたり、未来の世代へ自信をもってバトンを渡していくことができるよう、中長期的な目線に立ち、足元の課題にも全力で取り組んでまいります。

 それでは、後期総合基本計画に掲げる5つの基本目標及びまちづくりの進め方に従い、順次、重点的な施策についての方針を述べさせていただきます。

1.【安心して暮らせるまちをめざして】

 一つ目に、「安心して暮らせるまちをめざして」についてです。

 安心して妊娠、出産、子育てができる支援体制の確保につきましては、子育て世代に選ばれるまちをめざして、様々な子育て支援施策を展開してまいりました。その一つである、こども医療費助成制度につきましては、本年7月から所得要件を撤廃いたします。これに伴い、0歳から中学校3年生までのすべての子どもを対象に、医療費の自己負担額を全額助成いたします。

 待機児童問題につきましては、ここ数年、保育所等の整備を積極的に進め、定員を大きく拡大することで、解消を図ってまいりましたが、今年度、幼児教育・保育の無償化の影響などから、4年振りに増加に転じております。新年度におきましては、保育施設等の定員増加や、0歳から2歳児の子どもを受け入れる小規模保育事業所の整備を図ってまいります。あわせて、3歳児に係る教育施設の利用ニーズが高まりを見せていることから、公立幼稚園及び認定こども園幼稚園部における3歳児の受入れについて、令和3年度の実施に向けた検討を進めてまいります。

 また、保育中の子どもの健康管理や体調不良時の迅速な対応など、安心して預けたいという保護者のニーズに対応するため、引き続き、私立認可保育所等における看護師の配置を促進いたします。

 一方で、本市におきましても、保育士や保育教諭の不足が大きな問題となっています。新年度におきましては、処遇改善を目的として、就労支援一時金を拡充し、新規採用時から6年間で最大140万円を支給してまいります。さらに、奨学金の返還支援の拡充や、保育士のために宿舎の借上げを行う事業者に対する経費の補助を実施いたします。加えて、就職相談の充実に向け、就職フェアとあわせて保育施設等を見学するバスツアーを実施してまいります。また、働き方改革を通じて保育士一人一人が子どもと十分に向き合う時間を確保できるよう、今年度、川西こども園をモデル園に、午睡チェックセンサーの導入など、ICT(情報通信技術)を活用して保育業務の効率化を図る実証実験を行いました。新年度におきましては、その他の公立保育所及び認定こども園への導入を進めるとともに、実証実験の成果を広く周知し、私立認可保育所等への横展開を推進することで、子どもたちはもとより、保育士の皆さまや保護者の皆さまにとって、魅力ある保育環境の実現をめざしてまいります。

 妊娠を望むご夫婦への支援につきましては、今まで以上に不妊・不育治療を受けやすい環境をつくるため、現在の助成制度から所得要件及び一般不妊治療の助成回数の制限を撤廃するとともに、不妊検査のみで治療に至らなかった場合でも助成の対象といたします。また、夫婦共に検査した場合は、助成上限額を引き上げるなど、夫婦そろっての不妊検査・治療を支援してまいります。

 次に、福祉分野についてですが、判断能力が十分でない方の財産や人間としての尊厳が損なわれることのないよう、法律面や生活面から支援する成年後見制度の利用促進を図るため、(仮称)成年後見支援センターの設置に向けて関係機関と検討を進めており、新年度中の開設をめざします。

 また、ひとり暮らしの高齢者などが、急病や事故等の緊急時に通報するための緊急通報システムにつきましては、利用する方にとって、より利便性の高いものとなるよう、システムの再構築を進めてまいります。

 障がい者福祉につきましては、障がいのある方への地域生活支援や社会参加支援が進む中、本年中に県下初の施設となる「医療支援型グループホーム」の開設が予定されております。本市における医療的ケアが必要な重症心身障がい者の地域生活を支える中核的な役割を担うことが期待されていることから、サービスの提供体制の充実に向けた支援を行ってまいります。

 介護保険事業につきましては、施設整備費の補助対象を拡充するとともに、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の新規開設事業者に対して人件費や賃借料の運営費補助を行うことにより、新規参入を促進し、施設整備の充実を図ります。

 また、介護保険サービスの担い手となる介護人材の確保が一層重要となる中、訪問介護員や訪問看護師が安全かつ安心して働くことができる環境整備を進めるため、2名体制での訪問に対する補助を実施いたします。

 次に、防災対策についてです。年々激しさを増す自然災害に対して、市民の皆さま、事業者の皆さま、行政が互いに支え合い、助け合うことだけでなく、危機が目前に迫りくる場合には、何よりも自らの命を守ることを最優先に行動することが必要です。新年度におきましては、おおむね千年に1度と言われる大雨にも備えるため、本市の総合防災マップを更新いたします。新たな防災マップは、ハザードマップとあわせて防災情報をこれまで以上に分かりやすく盛り込み、平時からの防災意識の向上と、日々の備えの大切さを改めて感じていただくことを目的に、市民の皆さまはもとより、市内に所在する事業所にも配布してまいります。

 また、市として「公助」の役割を果たすため、避難所の物資の備蓄に努めているところですが、災害発生時における応援要請及び受入体制の整備に向けて、受援計画を策定してまいります。

 消防・救急体制につきましては、様々な方からの119番通報に、迅速かつ的確に対応するため、電話通訳センターを利用した、多言語対応化に取り組むとともに、医療機関との適切な連携のもと、さらなる体制の充実を図ってまいります。

 消費者保護対策につきましては、依然として、架空請求やインターネットに関するトラブルなどの相談が消費生活センターに多く寄せられております。消費者自身が自主的かつ合理的な行動を選択することにより、被害を未然に防止するため、引き続き、地域や学校、民間企業等との連携・協力のもと、子どもや若者、高齢者を対象とした出前講座の開催や啓発活動を推進してまいります。

2.【心豊かに暮らせるまちをめざして】

 次に、「心豊かに暮らせるまちをめざして」についてです。

 快適に学習できる環境を確保するため、取り組んでまいりました小中学校へのエアコン設置につきましては、前倒しを実現し、小学校、中学校ともに使用を開始することができました。引き続き、幼稚園についても、本年9月からの使用開始をめざし、設置工事を進めてまいります。

 また、新年度には、子どもと教職員がともに、ゆとりある教育課程のもとで教育活動が展開できるよう、夏季休業期間の短縮を試行的に実施してまいります。

 さらに、小学校における新学習指導要領の全面実施に伴い、小学校3・4年生で「外国語活動」が導入され、5・6年生では「外国語」が教科化されることから、外国語指導助手(ALT)の生きた英語に触れる機会を充実させるとともに、中学校においては、パフォーマンステストの実施や、その結果を踏まえた授業改善等に取り組むことで英語力の向上をめざしてまいります。

 本市が先駆的に取り組んでいる「協同的探究学習」につきましては、子どもたちの授業に取り組む前向きな姿勢が多く見られるようになるほか、実践協力校で実施した算数科の調査において、自分の考えを粘り強く表現できる傾向が表れるなど、取組の成果を感じているところです。引き続き、パイロット校における研究成果を全市で共有し、「協同的探究学習」を軸とした本市独自の教育を実践してまいります。

 また、児童生徒一人一台のICT機器を計画的に整備することで、子どもたちの情報活用能力を育むことはもとより、効果的な学習活動を展開し、本市の教育環境の一層の充実を図ってまいります。 

 そして、小学校の児童クラブにつきましては、全学年の受入れと、開所時間の拡大を実現したところですが、新年度におきましては、市内全クラブの運営を支援し、職員を指導する児童クラブ推進員を2名増員し、4名とすることで、さらなる質の向上を図ってまいります。

 いじめの防止対策につきましては、「いじめ防止対策改善基本5か年計画」に基づく取組を開始して2年が経過しようとしています。「いじめの見逃しゼロ」をめざし、教育委員会と学校現場の連携のもと、いじめの正確な認知に向けた取組を進めているところです。些細なことでも一つ一つ「チーム学校」として丁寧に対応し、早期発見・早期対応を行うとともに、命や人権を尊重し、自己肯定感を育む教育を推進することで、いじめの未然防止に取り組んでまいります。

 一方、学校における子どもたちへの体罰事案への対応につきましては、教育委員会と連携し、適切な指導及び研修を通じ、子どもたちや保護者の皆さまからの信頼回復に努めてまいります。

 学校園の施設整備につきましては、引き続きトイレの洋式化を進めるとともに、今年度末に策定予定の「学校園施設長寿命化計画」に基づき、施設の適切な維持管理や長寿命化に取り組んでまいります。

 中学校給食につきましては、(仮称)日岡山学校給食センターからの配送により、本年9月から6中学校への給食を開始いたします。また、(仮称)神野台学校給食センターにおいては、令和3年9月からの配送開始をめざし、施設整備を着実に進めてまいります。

 学校・家庭・地域の協働による学校づくりにつきましては、保護者の皆さまや地域の皆さまとともに、学校運営協議会を中心として、各学校の特色を生かした学校運営のもと、子どもたちの豊かな成長を地域全体で支えていくことが重要です。とりわけ、児童生徒数の減少が著しい両荘地区においては、子どもたちにとって、よりよい教育環境のあり方を検討する必要が生じていることから、昨年開催した地域の皆さまとの意見交換や、その後に実施した全戸アンケートを通じて、施設一体型小中一貫校の設置を提案し、学校運営協議会をはじめ、地域の皆さまの生の声をお伺いしてまいりました。今後、いただいた多くのご意見をもとに、引き続き、スピード感を持って、学校規模の適正化に向けた取組を進めてまいります。

 また、地域の皆さまのご協力を得て、今年度からすべての小学校において実施しております「放課後子ども教室(チャレンジクラブ)」につきましては、種目の充実を図るとともに、長期休業期間における学習支援活動を実施してまいります。

 文化・芸術活動の振興につきましては、「棋士のまち加古川」としての認知度のさらなる向上と将棋人口の増加を図る中で、子どもたちが将棋に触れるきっかけを増やし、親しみや興味を持つことができるよう、地元ゆかりのプロ棋士から直接指導を受ける新たな機会を設けるほか、子どもを対象にした将棋大会を開催してまいります。

 人権文化の確立につきましては、引き続き、「人権教育及び人権啓発に関する基本計画」に基づき、すべての市民が日々の暮らしの中で人権を大切にし、尊重し合うまちづくりをめざしてまいります。

3.【うるおいのある環境の中で暮らせるまちをめざして】

 次に、「うるおいのある環境の中で暮らせるまちをめざして」についてです。

 本市では、市民の皆さまと事業者の皆さま、行政が一体となり、持続可能なまちづくりを推進しています。とりわけ、ごみの減量につきましては、燃やすごみを平成25年度と比較して、20%減量することを目標に取り組んできた結果、市民の皆さまと事業者の皆さまのご協力のもと、本年1月末時点では、24.8%の減量となりました。今後も引き続き、循環型社会の構築に向け、より一層のごみ減量を進めるため、家庭から出る燃やすごみを対象に、指定ごみ袋制度の導入を決定いたしました。新年度におきましては、令和3年6月からの指定ごみ袋制度実施に向けた準備や制度の周知を進めるとともに、ごみの分別と資源化の徹底や食品ロスの削減をはじめとする様々なごみ減量施策を継続してまいります。

 また、高砂市、稲美町、播磨町との連携のもと取り組んでいる広域ごみ処理については、施設の建設工事が順調に進捗しており、2年後の実施に向け、引き続き関係市町と連携して取り組んでまいります。

 環境美化の推進につきましては、ペットのふん害対策など、飼い主のマナー向上に取り組んでおり、昨年度から実施しております「イエローチョーク作戦」をさらに推進してまいります。また、飼い主のいない猫に対しても、市民団体の皆さまのご協力を得ながら、効果的な対策の検討を進めてまいります。

 生活排水処理対策につきましては、公共下水道整備区域を除く地域における合併処理浄化槽の設置や維持管理に対する補助制度を引き続き実施するとともに、積極的に啓発してまいります。また、し尿や浄化槽汚泥の受入施設である尾上処理工場は、老朽化に伴う施設の再整備に向けた生活環境影響調査や整備計画の検討を行ってまいります。

4.【にぎわいの中で暮らせるまちをめざして】

 次に、「にぎわいの中で暮らせるまちをめざして」についてです。

 地方創生を進めていくためには、地域産業の活性化を通じて新たな雇用を生み出しつつ、定住人口や関係人口の増加につなげていくことが重要です。それに加え、本市を訪れる観光客を中心とした交流人口を増やすために、効果的な施策を行っていく必要があると考えております。本市では依然として転出超過が続いておりますが、奨学金返還支援制度については、今年度の拡充により、申請件数が大きく増加したところです。新年度におきましては、移住・定住施策の側面に加え、市内事業所の人手不足の解消をより一層重視し、市内事業所に勤務している方に対してさらなる拡充を行います。

 また、現在、野口町の「水足戸ヶ池周辺地区まちづくり協議会」における産業用地創出への取組を支援しているところです。本市といたしましても、戸ヶ池周辺地区に続く、新たな可能性についての調査を実施してまいります。

 中心市街地の活性化につきましては、JR加古川駅周辺における防災道路の延伸へ向けた地元調整や、駅北口の市有地の利活用を図りつつ、関係団体とも連携しながら、しっかりと取り組んでまいります。

 次に、農業につきましては、イノシシ等有害鳥獣による被害が増加傾向にあるため、侵入防護柵を購入し地域の方々の力をお借りして整備していく取組を新たに展開することで、被害の拡大を防止してまいります。 加えて、稲の苗に食害を発生させるジャンボタニシへの対策として、薬剤購入にかかる費用を助成する制度を開始いたします。

 また、市内で栽培されるパスタ向け小麦品種の「セトデュール」を使用した「加古川パスタ」は、レシピコンテストにおいて入賞した作品が市内飲食店でメニュー化されたり、レシピ本が作成されたりするなど、地域ブランド化への期待がますます大きくなっています。新年度におきましては、商談会への出展やPRのためのイベント開催について支援することや、学校給食での提供回数を増やすことを通じて地元食材としての認知度向上を図ってまいります。

 さらに、レクリエーション等の拠点の一つである見土呂フルーツパークにつきましては、老朽化する施設設備の更新を機に、民間事業者の創意工夫を活用しながら、豊かな自然と季節の味覚を満喫できる農業公園としての魅力を最大限に引き出すことができるよう、再整備に向けた取組を進めてまいります。

 観光の振興につきましては、「観光まちづくり戦略」を改定し、新たな計画のもと、事業を展開してまいります。新年度には、加古川和牛や志方牛を楽しめるグルメイベントを開催するほか、「かつめし」や「ギュッとメシ」、「がわ鍋」、そして「おくるみおやつ」といったバリエーション豊かなご当地グルメや地元食材を活用した食の観光化を推し進めてまいります。また、さらなる観光客の増加には、的確な情報発信と幅広い連携が欠かせません。多様な手段を効果的に使い、ターゲットに的確な情報を届けるとともに、観光協会や周辺市町、民間事業者の皆さまとの連携の中で、本市の観光資源のさらなる有効活用を図ってまいります。

 本市のふるさと納税につきましては、全国の皆さまから非常にたくさんの応援をいただき、今年度の寄附金総額が昨年の12月末時点で2億3千万円を超え、過去最高を更新することとなりました。新年度には、寄附する際の決済手段の充実により、利便性の向上を図るとともに、市内事業者の皆さまのご協力のもと、魅力ある特産品の数々を効果的に発信してまいります。

5.【快適に暮らせるまちをめざして】

 次に、「快適に暮らせるまちをめざして」についてです。

 本格的な人口減少・少子高齢化が進む中、持続可能なまちづくりに向けて、地域の特性を踏まえた計画的な土地利用により、ふさわしい機能の誘導と集積を図っていく必要があります。

 とりわけ、都心であるJR加古川駅周辺につきましては、現在、多様な世代が集い、過ごすことができる空間の形成をめざし「加古川駅周辺地区まちづくり構想」の策定を進めているところです。通勤・通学の利便性に富む加古川駅の強みと、既存の商業施設の集積を生かした、新たな滞在空間や都心居住機能の整備に向け、加古川駅北土地区画整理事業31街区1画地の利活用を図りつつ、周辺土地所有者の開発を促してまいります。また、加古川駅南西地区における住民主体のまちづくり活動を積極的に支援することで、防災道路の延伸や、都心にふさわしい土地利用の促進、商業地としてのにぎわいの創出をめざしてまいります。

 さらに、副都心であるJR東加古川駅周辺につきましては、県及び鉄道事業者との緊密な連携のもと、鉄道の高架化を図る連続立体交差事業に取り組んでまいります。新年度におきましては、都市計画決定に向け、準備を進めるとともに、課題となっている緊急対策踏切の解消はもとより、事業を契機とした魅力あるまちづくりの実現をめざしてまいります。

 公共交通につきましては、全国的に、利用者の減少や運転手の不足による路線バスの休止・縮小が相次ぐなど、地域の公共交通を取り巻く環境は、さらに厳しさが増しており、社会情勢の変化や地域の移動需要に対応した細やかな交通政策が求められています。また、本市では、市民満足度が極めて低い水準でとどまっており、最重要課題の一つとして取組を進めているところです。新年度におきましては、「かこバス」ルートの増設・再編や加古川以西における「かこバスミニ」の新たなルートの導入など、生活利便性の向上及び公共交通網の充実を図ってまいります。さらに、バス利用の促進に向け、市内を運行する民営路線バスに対する上限運賃制度を導入してまいります。また、八幡町において、電話予約等により自宅周辺から目的地までを乗り合いにより送迎するデマンドタクシーの実証実験を実施し、高齢者等の交通弱者における移動需要を補いつつ、新たな公共交通のあり方について検討を進めてまいります。

 災害に強い都市基盤の整備につきましては、昨年、大型の台風が日本列島を襲い、各地で甚大な被害が発生しました。命を守る防災・減災につなげ、地域の強靭きょうじん化を図るために、とりわけ、雨水幹線の整備や排水路の改築等を確実に実施し、市民の皆さまと事業者の皆さま、行政が相互に連携・協力した総合治水対策をより一層進め、災害に強いまちづくりを実現いたします。

 幹線道路の整備につきましては、平野神野線、中津水足線及び神吉中津線の早期完了に向けて、計画的かつ着実に事業を推進してまいります。また、本市中心部の東西交通の要である国道2号線につきましては、事業主体である兵庫県と密接に連携を図りながら、平野工区の整備及び加古川橋梁きょうりょうの架け替えを含め、4車線対面通行化に向けた取組を推進し、幹線道路によるネットワークの構築を図ってまいります。さらに、東播磨道の延伸につきましても、八幡稲美ランプから国道175号までの北工区について、今後も県との連携を密に図ってまいります。

 一方、播磨臨海地域道路につきましては、昨年、国から4つのルート帯案が示され、現在、国において、ヒアリングやアンケート調査の結果を踏まえ、ルート帯の絞り込みや構造等の検討が行われている段階です。今後も国の動向に対応しながら、ルート帯周辺の土地利用計画や幹線道路ネットワークの再編などについて検討を進めてまいります。

 公園の整備につきましては、とりわけ、市民に広く親しまれている日岡山公園の駐車場部分の整備工事を、引き続き進めてまいります。また、JR日岡駅についても、日岡山公園の玄関口にふさわしい駅となるよう、駅舎等に係る基本設計及び実施設計を進め、リニューアルに向けて取り組んでまいります。

 水道事業及び下水道事業につきましては、市民の皆さまに世代を超えて良質なサービスを提供し続けるため、昨年度末に策定いたしました「水道ビジョン2028」及び「下水道ビジョン2028」に基づき、施設の老朽化対策や耐震化を進め、危機に強く安全で安心な上下水道の構築を図るとともに、アセットマネジメントを取り入れた中長期的な視点での経営を進めてまいります。とりわけ、水道事業では、大規模地震の発生に備え、中西条浄水場など重要施設の更新や耐震化を進めるとともに、老朽化が進む水道管については、基幹管路を優先しながら、計画的に更新してまいります。また、下水道事業では、官民連携手法を取り入れている志方地区の下水道整備事業を引き続き推進するなど、公共下水道整備区域内の未普及エリアの早期解消に取り組んでまいります。

6.【まちづくりの進め方】

 最後に、まちづくりの進め方についてです。

 「一人一人が生活の中に幸せを実感できる、郷土愛あふれるまちづくり」をめざしていくために、市の財政状況を見極めながらも、積極的に皆さまの生活満足度の向上を図ってまいります。そのためにも、何より、市の取組やサービスをしっかりとお伝えし、知っていただき、活用いただくことが重要と考え、戦略的かつ効果的なシティプロモーションに取り組んでいます。新年度も引き続き、市制70周年記念事業や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会など、様々なイベントの機会も生かしながら、市への愛着と誇りの醸成を図るとともに、あらゆる世代に本市の取組や魅力をお伝えしてまいります。

 また、まちづくりや地域課題の解決を進めていくためには、市民、地域コミュニティ団体、市民活動団体、事業者、行政等がそれぞれの役割と責任のもとに連携して、協働で取り組むことが重要です。そのための具体的な施策である「かこがわウェルピーポイント制度」につきましては、積極的なPRを進めており、多くの方にご参加いただいているところです。引き続き、さらなる制度の発展に向け、取り組んでまいります。

 現在、令和3年度を初年度とする新たな総合計画の策定を進めております。今後、パブリックコメントの実施や審議会への諮問をはじめ、市民の皆さま、事業者の皆さま、そして議員の皆さまからご意見をいただきながら、本市のめざすべき将来像や、その実現に必要な施策の方向性を定めてまいります。

 また、ICTを活用した行政サービスの新たな展開であるスマートシティの取組をさらに推進し、市民の皆さまの生活の質の向上を図ってまいります。新年度におきましては、市の情報発信ツールとして、コミュニケーションアプリ「LINE」を活用してまいります。また、スマートフォンを利用して税や保険料等の納付ができるよう、納付環境のさらなる充実にも取り組んでまいります。これらの取組をはじめとして、時間と場所を問わず、自宅にいながら行政手続きができる、利便性の高いサービスの提供方法の検討を進めてまいります。

 見守りカメラ・見守りサービスを活用した官民連携による安全・安心のまちづくりについては、国内外から大変注目されており、今後も本市におけるスマートシティの大きな柱として、さらなる活用可能性や新たな展開をめざしてまいります。

 一方で、多様化し拡大傾向にある市の事務事業や業務について、効果的で効率的なあり方を常に模索し、改善を続けることはもちろんのこと、市の財政状況に正面から向き合い、事業の見直しを含めた検討を行うことも不可欠です。従来の市民意識調査、事務事業評価のさらなる活用に加え、事業の目的や手法について所属の垣根を越えた全市的な視点から検証することを目的に、中堅職員を中心とした政策議論の場を作ってまいります。あわせて、業務の効率化や働き方改革を推進するため、現在取り組んでいるRPA(Robotic Process Automation)のさらなる活用に加え、AI(人工知能)を用いた業務支援ツールを、全庁的に取り入れてまいります。

 また、国においてマイナンバーカードの普及促進に向けた方針が出される中、本年9月からはマイナポイントを活用した消費活性化策の実施も予定されています。市民の皆さまがカードを取得しやすい環境を整備するとともに、マイナポイントの申込みをスムーズに行っていただけるよう、支援体制の充実を図ってまいります。

 公共施設等の管理につきましては、「公共施設等総合管理計画」に基づく個別施設計画の策定を進め、施設ごとに今後の整備の方向性を定めてまいります。また、加古川東市民病院跡地につきましては、「交流」・「学び」・「安心」・「憩い」・「にぎわい」の5つのキーワードをコンセプトに、多世代が集い、つながる、新たな施設の建設が始まります。令和4年度の開設に向けて着実に工事を進め、公共施設の再編による魅力ある施設整備を推進し、誰もが気軽に利用できる「地域に愛される開かれた空間」を創出いたします。

 広域的な都市間連携につきましては、本市とともに東播臨海広域行政協議会を構成する高砂市、稲美町、播磨町との強い連携のもと、広域ごみ処理施設や休日・夜間一次救急医療施設の建設を推進いたします。また、播磨圏域連携中枢都市圏においては、今年度末に改定予定の新たなビジョンに基づき、播磨圏域全体の活性化に向けた取組を進めてまいります。

おわりに

 以上、令和2年度の市政運営の方針と基本的な考え方を申し述べてまいりました。本年は市制70周年であるとともに、新たな総合計画の策定という、将来の加古川市を市民の皆さまと一緒に思い描く年でもあります。大きく変化する社会環境を受け止めながらも、一人一人の幸せを大切に、未来に向けた大きな一歩をしっかりと踏み出してまいります。議員各位並びに市民の皆さまの一層のご理解、ご協力をお願い申しあげまして、令和2年度の施政方針といたします。

(注釈)当日の演説と表現その他に若干の違いがあることをご了承ください。

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