平成30年度施政方針

更新日:2019年12月23日

 平成30年第1回市議会定例会の初日(平成30年2月23日)に行われた平成30年度施政方針演説の内容です。

 本日、平成30年第1回市議会定例会が開会され、平成30年度当初予算案をはじめ重要案件をご審議いただくにあたり、新年度における施政の方針を申しあげます。

はじめに

 さて、私たちを取り巻く昨今の社会経済環境についてですが、内閣府の月例経済報告や日銀短観などによりますと、「経済情勢は緩やかながらも回復の傾向にある」とされております。加古川公共職業安定所管内におきましても、本年2月に公表された有効求人倍率が前年比で0.12ポイント増の1.08倍に上昇しており、雇用環境の改善が進んでいるものと考えられます。しかしながら、いわゆる2025年問題として指摘されておりますとおり、国の財政状況は、医療費や介護費の急増が見込まれるほか、人口減少と東京一極集中の傾向が続くことなどにより、地方における社会経済は、依然として厳しい状況にあると認識しております。

 本市におきましても、人口の自然減と転出超過の状況が続いております。今後は、生産年齢人口の減少に伴う市税収入の伸び悩みや、公共施設の老朽化対策など投資的経費の増大も見込まれるため、将来の財政状況を見極めた慎重かつ積極的な舵(かじ)取りが必要になってまいります。

市長就任後の取組について

 私は、市長就任時より「オープン」をキーワードに「徹底的な情報公開」「笑顔が集まる明るいまちづくり」「子育てや人材育成に全力で取り組む」「市民の助け合いの精神を育み、ぬくもりある生活環境を実現する」などを掲げ、様々な課題に全力で取り組んでまいりました。

 まず、公開事業評価を毎年実施し、47の事業について、様々なご意見をもとに事業内容の見直しを進めつつ、こども医療費や予防接種の助成拡充、安全・安心パトロールの夜間実施、さらには外国語指導助手(ALT)やスクールアシスタントの増員などに取り組んできたところです。

 また、これまでに「まちづくりオープンミーティング」を21回開催するとともに、各地域の地区別行政懇談会に自ら参加するなど、市民の皆さまとの積極的な対話を進めてまいりました。さらに、本市の特産品などを、ふるさと納税のお礼の品としてPRすることや、「棋士のまち加古川」の全国への発信等に努めてきたところです。また、地域医療体制を守り、その充実を図る取組として、加古川中央市民病院を開院するほか、加古川西市民病院跡地への医療・福祉機能の誘致や、加古川東市民病院跡地においては、公民館・子育てプラザ・消防署の移転・集約を計画するなど、市民ニーズを踏まえながら、長年の懸案でありました病院の統合・再編、及び跡地活用に取り組んでまいりました。

 次に、子育て支援や人材育成につきましては、妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援に重点的に取り組み、不妊・不育治療への助成を新たに開始することに加え、妊婦健診やこども医療費等についての助成を拡充してまいりました。新年度におきましては、これら助成制度のさらなる充実に向けて取り組んでまいります。また、この間、待機児童が大変大きな社会問題となりましたが、保育所や児童クラブの整備につきましては、特に積極的な予算配分を行い、平成27年4月からの2年間で保育所の定員を945人増加させたことにより、待機児童を175人減少させてまいりました。加えて、児童クラブにつきましても、この3年間で29クラブの拡充を行い、定員を791人増加させてきたところです。今後も、待機児童の解消と児童クラブにおける受入枠の確保を図ってまいります。

 義務教育等の充実につきましては、幼稚園・保育所へALTを派遣するとともに、小中学校への派遣時間も大きく拡大しております。また、子どもたち一人一人に寄り添った支援に努めるため、スクールアシスタントにつきましても増員を図ってまいりました。一方、施設整備面では、学習環境の整備・充実に努めているところであり、これまで進めてまいりました老朽化対策等に加え、新年度におきましては、より快適な学習環境が確保されるよう、空調設備の設置に向けた新たな取組も進めてまいります。また、中学校給食につきましては、日岡山公園隣接地及び神野台地区における給食センターの整備に向け、着実に取り組んでいるところです。

 そして、市民の助け合いの精神を育み、ぬくもりある生活環境を実現すべく、「かこがわウェルピーポイント制度」や「協働のまちづくり推進事業補助金制度」などを創設することで、様々な地域課題の解決及び地域の活性化に向けた活動のきっかけとなる新しい枠組みを構築してまいりました。また、「見守りカメラ」の設置や「見守りサービス」の導入など、安全・安心なまちづくりにつながる取組も進めてきたところです。

新年度の市政運営にあたっての基本的な考え方について

 このように、議員の皆さまのご理解のもと、様々な方のお力添えをいただきながら、基本政策の実現に向けた取組を進めることができました。毎年度実施することとしている市民満足度に係る調査におきましても、数多くの項目において、2020年度の目標値を超えるなど、概ね上昇傾向が見られるところです。

 しかしながら、一昨年の9月には、市内の中学生が自ら尊い命を絶つという痛ましい事案が発生いたしました。学校内で起きたいじめ事象について、いじめ問題対策委員会からの提言を真摯(しんし)に受け止め、二度とこのような事案が起こらないよう、強い決意を持って各施策に取り組んでまいります。

 それでは、後期総合基本計画に掲げる5つの基本目標及びまちづくりの進め方に従い、順次、重点的な施策についての方針を述べさせていただきます。

1.【安心して暮らせるまちをめざして】

 まずは、「安心して暮らせるまちをめざして」についてです。

 本市の高齢化率は、本年2月時点で26%を超え、今後も、さらに上昇することが見込まれています。そのため、高齢者が住み慣れた地域でいつまでも自分らしい生活を送ることができるよう、地域包括ケアシステムの強化に向けて様々な取組を実施しているところです。

 新年度におきましては、「高齢者福祉計画」及び「介護保険事業計画」に基づき、新たに両荘及び志方地区にも生活支援コーディネーターを配置し、「ささえあい協議会」を設置するなど、生活支援体制の整備を促進してまいります。また、「(仮称)在宅医療・介護連携支援センター」を設置し、在宅医療に関する相談支援や医療・介護専門職の連携支援に取り組んでまいります。さらに、「いきいき百歳体操」などの介護予防の取組や、重度化防止に関する普及啓発等を積極的に進め、地域包括ケアシステムの深化と、その推進を図ってまいります。

 安心して妊娠、出産、子育てができる支援体制の確保につきましては、妊産婦や乳幼児への切れ目のない支援を充実させるため、妊婦健康診査費の助成を拡充することに加え、新たに、出産直後の母子に対して医療機関及び助産所での宿泊や通所、助産師の訪問により支援する産後ケア事業を実施いたします。また、子育て世帯をさらに支援するため、小学校4年生から中学校3年生までの通院医療費に係る一部負担金を、これまでの定額負担から無料化してまいります。

 一方、子育てをしながら、男女ともに働きやすい社会を実現するためには、待機児童の解消を進めるとともに、保育を支える保育士の確保が必要不可欠です。本市におきましては、保育士の確保をより一層進めるため、保育現場への就労を希望する学生等を対象に、加古川市保育協会との共催による就職相談フェアを開催いたします。さらに、保育士の確保と定着を図るため、新たに採用された新卒等の保育士及び採用後5年間継続勤務した保育士に一時金を支給する市内の認可保育所等に対する助成を行ってまいります。また、待機児童対策につきましては、「子ども・子育て支援事業計画」を改定し、教育・保育の量の見込み、及びそれに対応する確保方策の見直しなどにより、早期の待機児童の解消をめざしてまいります。

 就学前の教育と保育の一体的な提供につきましては、新たな市立認定こども園として「川西こども園」を本年4月に開設することに加え、「(仮称)東神吉こども園」について、来年4月の開設に向けた園舎の新築工事を実施いたします。

 また、働く女性が年度途中においても、育児休業から復帰できるよう、子どもの受入体制を整える市内の認可保育所等を支援してまいります。加えて、児童クラブにつきましては、新たに13クラブを開設し、合計74クラブでの体制強化を図るとともに、平成31年度からの全小学校における高学年の受入に向けた施設整備に取り組んでまいります。

 障がい者福祉につきましては、昨年9月に開設した「障がい者基幹相談支援センター」を中心に、市内の相談支援事業所や障害福祉サービス事業所の有機的な連携による地域生活支援拠点の整備を進め、障がい者の地域生活への移行や自立した生活への支援を行ってまいります。また、生活介護事業所やグループホームの開設を支援する補助金制度を創設し、障がいのある人、とりわけ医療的ケアが必要な方々が安心して日常生活を送り続けられる環境を整えてまいります。

 国民健康保険事業につきましては、本年4月から共同保険者となる兵庫県とともに国民健康保険制度の安定化に向けて取り組んでまいります。また、「データヘルス計画」に基づき、特定健診の受診率向上を図るとともに、健康の実態や特性に応じた効果的な保健事業を実施し、被保険者の健康の保持増進につなげてまいります。

 また、健康づくりにつきましては、「ウェルネスプランかこがわ」に基づき、健康寿命の延伸と健康格差の縮小をめざし、自主的な健康づくりの支援と食育の推進に引き続き取り組んでまいります。

 消費者保護対策につきましては、インターネットに関連した消費者トラブルや高齢者を狙った特殊詐欺など、消費生活センターには多くの相談が寄せられています。そのため、今後も、出前講座や街頭啓発などの様々な機会を活用し、消費生活に関する正しい知識の普及を図るとともに、地域や関係機関等と連携し被害の未然防止への取組を推進してまいります。

 災害や非常事態に対応する体制につきましては、昨年、総務省消防庁による「戸別受信機等の情報伝達手段に係る実証事業」を行い、V‐Lowマルチメディア放送が、音声による情報伝達のほか、様々な機器を作動させる手段としても有効であることが確認できました。今後は、実証事業の結果を生かした屋外拡声器に加え、一部の避難所において門扉等の自動解錠装置を設置するほか、「(仮称)かこがわ防災アプリ」を導入することなどにより、各地域への適切な情報伝達や迅速な避難所の開設が図られるよう取り組んでまいります。

 さらに、大規模災害発生時に人・物・情報が制約を受けた場合でも、公助としての本市の使命が果たせるよう、業務継続計画(BCP)を策定してまいります。加えて、自助と共助を促進するため、本議会に提案しております「加古川市避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例」に基づき、自ら避難することが困難な方の情報を地域で共有していただくことにより、地域における避難支援体制の、さらなる充実を図ってまいりたいと考えております。

 消防・救急体制につきましては、災害現場での指揮・安全管理を強化し、安全かつ円滑に消防活動等が行えるよう、指揮業務や安全管理、現場広報等に特化した専任指揮隊を中央消防署及び東消防署に設置し、市民の皆さまの安全確保と被害の軽減を図ってまいります。

 防犯と交通安全対策につきましては、昨年から、市内の通学路を中心に、順次「見守りカメラ」の設置を進めており、本年3月までに約900台を、さらに新年度におきましては、約600台を設置してまいります。また、従前より実施しております「地域見守り防犯カメラ設置補助事業」とあわせ、地域防犯活動団体との連携や防犯・交通パトロールなどにより、防犯と交通安全対策の充実に努めてまいります。加えて、民間事業者との協働により、全ての小学校区において、見守りタグを持つ子どもや認知症高齢者などの位置情報を確認する「見守りサービス」も開始しており、今後、より検知エリアの拡充を図るとともに、サービスの利用拡大に向け、一層の周知に努めてまいります。

 情報通信技術(ICT)を活用したまちづくりにつきましては、市民の皆さまがより安心して快適に暮らすことができるよう、市が保有する防災・防犯・交通安全対策をはじめとした様々な情報をオープンデータとして公開してまいります。また、本市のホームページやスマートフォン向け行政アプリを通じて、積極的な情報発信を図るとともに、全国に先駆けたデータ利活用の手法を、民間事業者と共同研究してまいります。

2.【心豊かに暮らせるまちをめざして】

 次に、「心豊かに暮らせるまちをめざして」についてです。

 冒頭で申しあげました、いじめ再発防止に向けた取組につきましては、「いじめ防止対策改善基本5か年計画」に基づき、各学校において「改善プログラム」を策定し、確実な取組を進めてまいります。とりわけ、いじめや不登校問題の早期発見・早期対応策として、学校環境適応感尺度(アセス)の活用を徹底させるため、アセス推進担当教員を中心に、学校での実施体制を改善・強化してまいります。また、教育委員会内部に、「スクールサポートチーム」を設置し、諸課題に対する各種支援を行うほか、社会全体で取り組む一環として、「いじめ防止啓発月間」を設定し、様々な啓発活動等に取り組んでまいります。さらに、教育委員会における取組状況が適切に検証され、5か年計画及び改善プログラムが、より実効性のあるものとなるよう取り組んでまいります。

 昨年3月に学習指導要領が改訂され、子どもたちの未来を拓(ひら)くための資質・能力を育成することをはじめ、これまで以上に質の高い教育を実践することが求められています。新年度におきましては、思考力・判断力・表現力を、より一層育成するため、新たに「学力向上推進委員会」を設置し、協同的探究学習を取り入れた授業改善プランの策定や全教職員への研修等を通じて、「主体的・対話的で深い学び」を段階的に全小中学校へ展開してまいります。さらに、「ことばの力」の育成にも継続して取り組むことなどにより、学力の向上を図ってまいります。

 また、少子化の進行や市内各地域における子どもの数の偏在など、学校を取り巻く環境が大きく変化する中で、昨年、市内の北部地域を対象に実施したオープンミーティングでは、保護者の皆さまから様々なご意見をいただきました。学校教育の充実のためには、学校だけではなく、家庭、地域との協働が不可欠です。今後も、保護者等の十分な理解と協力を得ながら、地域の実態に応じた検討を進める必要があるため、新たに「地域とともにある学校づくり協議会」を設置し、本市における将来の教育の在り方について検討してまいります。

 学校園の施設整備につきましては、安全で快適な学習環境を整備するため、引き続き、校舎の外壁やトイレの改修工事等を進めることに加え、「学校園施設長寿命化計画」の策定に向けて、施設の老朽化状況等を調査してまいります。さらに、全小中学校の教室への空調設備の設置に向けた調査・研究を進めてまいります。

 また、中学校給食につきましては、これまでの志方中学校に加え、来年度から、両荘中学校において開始いたします。さらに、(仮称)日岡山学校給食センターの整備及び運営を行う事業者の選定を進めるほか、(仮称)神野台学校給食センターにおいても、事業者の選定に向けた準備等を進めてまいります。

 一方、地域の皆さまの協力を得て様々な文化・スポーツの体験ができる、「放課後子ども教室(チャレンジクラブ)」につきましては、新たに6校を加え、市内21小学校で実施するとともに、引き続き、市内全小学校での早期実施に向けた取組を進めてまいります。

 スポーツの推進につきましては、年齢や障害の有無にかかわらず、市民の誰もが、スポーツに親しむことができるよう、「スポーツ推進計画」に基づく様々な取組を展開してまいります。とりわけ、障がい者スポーツの普及をめざし、県障害者スポーツ協会等と連携し、障がい者の参加が促進されるよう取り組んでまいります。中でも、シッティングバレーボールにつきましては、必要な用具の充実や体験の機会を提供するなど、障がい者スポーツを通じた共生社会の実現をめざしてまいります。

 また、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催を2年後に控える中、スポーツを「ささえる」人口の拡大を図るため、新たに「(仮称)スポーツサポーターバンク」を設立し、国内外の選手や市内スポーツイベント等をサポートするボランティアを養成するほか、トップアスリート等による講演会やスポーツ教室等を通じて、その機運を醸成してまいります。さらに、教育面においても、子どもたちが異なる習慣や文化・言語に触れ、視野を広げることで、自分らしい生き方を見つめられるよう支援してまいります。

 文化の振興につきましては、昨年5月にオープンしました「かこがわ将棋プラザ」の、さらなる有効利用を図ってまいります。また、日本将棋連盟や大学等との連携による「将棋を活(い)かした健康づくり事業」を活用しながら、市民の皆さまに将棋を身近に感じていただけるよう、効果的に事業を展開し、「棋士のまち加古川」の魅力を全国に発信してまいります。

 人権文化の確立につきましては、「人権教育及び人権啓発に関する基本計画」に基づき、様々な人権課題における差別や偏見の解消に向けて、相談機能の強化を図るほか、人権教育や啓発の積極的な推進に努めてまいります。

3.【うるおいのある環境の中で暮らせるまちをめざして】

 次に、「うるおいのある環境の中で暮らせるまちをめざして」についてです。

 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を実現するため、廃棄物を適正に処理するだけでなく、廃棄物を減量化・資源化し、再利用を行う循環型社会の構築を、市民・事業者・行政が一体となって、めざしてまいります。とりわけ、本市におきましては、4年後の広域ごみ処理施設の稼働に向けて、燃やすごみを20%削減することが喫緊の課題となっており、「一般廃棄物処理基本計画」においても、ごみの焼却処理量の削減を最優先目標と位置付けているところです。そうした中、市民の皆さまのご協力のもと、粗大ごみの戸別有料収集や紙類の分別収集回数の増加に取り組んでまいりました。新年度におきましては、家庭系の剪定枝(せんていし)の資源化に向けた取組を進めるとともに、市民及び事業者が随時、紙類や衣類を出すことができるよう、資源物の拠点回収の充実を図るための取組を支援してまいります。

 また、事業系ごみの減量につきましては、市内の事業所を直接訪問し、雑がみ保管箱を配布するなど、啓発活動に引き続き努めてまいります。さらに、事業所の生ごみ処理機等の購入や事業所が共同で紙類の拠点回収を行う際の収納庫の購入について、費用の一部を補助するとともに、クリーンセンターへのごみ搬入時の検査体制を強化するなど、事業系ごみの減量に向けた取組を進めてまいります。

 生活排水処理対策につきましては、公共下水道整備区域外における合併処理浄化槽の設置を促進するための補助制度を継続するとともに、その啓発に努めてまいります。また、し尿や浄化槽汚泥を処理する尾上処理工場につきましては、施設の老朽化対策に向けた取組を進めてまいります。

4.【にぎわいの中で暮らせるまちをめざして】

 次に、「にぎわいの中で暮らせるまちをめざして」についてです。

 本市における新たな雇用を創出し、地域経済の活性化を図るため、地域の産業に対する支援を積極的に行うとともに、本市の魅力を効果的に発信することで、観光客を中心とする交流人口の増加に努めるなど、各分野の施策を効果的に関連させていくことが必要であると考えております。

 まず、農業の振興につきましては、農業生産性の向上を図るため、農地の大区画化・整形化等の基盤整備事業を推進し、農地を集積させるとともに、耕作放棄田等の低・未利用地を活用した「綿人(わたびと)」づくり事業や「かこがわ育農塾」を展開することなどにより、引き続き、農業の担い手不足の解消に取り組んでまいります。

 また、国の交付金を活用し、6次産業化に向けた、市内事業者による施設整備等の取組を支援するとともに、軽トラ市の開催などによる地産地消の推進や、ふるさと納税制度を活用した加古川和牛の特産品としての地位向上などにより、市内の農畜産業の振興に努めてまいります。さらに、見土呂フルーツパークにつきましては、公開事業評価での指摘内容も踏まえ、市北部の拠点施設として活性化できるよう、今後の在り方を検討してまいります。

 工業の振興につきましては、市内への新たな企業の誘致が図られるよう、引き続き、「企業立地促進奨励金」の交付による企業への支援を行うほか、産業用地の拡大に向けた、まちづくり協議会の活動に対する支援を積極的に行ってまいります。

 また、市内企業のインターンシップ制度を支援するため、学生だけでなく、保護者も対象とした企業説明会を開催するとともに、市内中小企業における人材確保をめざし、若年労働者の奨学金の返済を支援する制度を創設してまいります。

 地場産業の振興につきましては、全国三大産地を形成している靴下製造業を盛り上げていくため、ふるさと納税制度の返礼品としてPRを継続するとともに、加古川市で生産された靴下の良さを幅広く情報発信し、製品の高付加価値化や販路の拡大に向け、事業者と連携した取組を検討してまいります。

 商業・サービス業の振興につきましては、引き続き、中小企業融資制度やクラウドファンディングの利用促進を図ることにより、中小企業を中心に商業の活性化を図ってまいります。さらに、新規事業者に対しては、既存の空き店舗等の活用を含めた出店支援を継続して行ってまいります。また、公設地方卸売市場につきましては、今年度策定した整備方針の内容を踏まえ、再整備に向けた計画の策定に取り組んでまいります。

 観光の振興につきましては、「観光まちづくり戦略」に基づき、昨年2月に誕生した「加古川ギュッとメシ」に続く新たなご当地グルメの開発に取り組んでまいります。今回は、世代を問わず食べていただけるよう、加古川らしさを詰め込んだスイーツを開発し、「かつめし」も含めた食の観光化を、さらに推し進めてまいります。また、鶴林寺をはじめとする様々な観光資源とあわせて、観光PR動画やご当地パンフレット、観光大使の制度なども活用しながら、本市の魅力を戦略的に発信してまいります。一方、広域的な観光の取組につきましては、播磨連携中枢都市圏や播磨広域連携協議会を構成する関係市町と連携し、「豊穣(ほうじょう)の国・はりま」のブランド力を向上させるとともに、インバウンド観光も見据えた事業を展開するなど、播磨圏域としての魅力を高めてまいります。

5.【快適に暮らせるまちをめざして】

 次に、「快適に暮らせるまちをめざして」についてです。

 人口減少や高齢化がより一層進行する中、「都市計画マスタープラン」に基づき、地域の特性に応じた計画的な土地利用や道路・公園などの都市機能の適切な誘導を図ってまいります。

 公共交通につきましては、「地域公共交通プラン」に基づき、地域の特性や移動需要に対応した公共交通網の構築を進め、路線バスをはじめとする従来からの公共交通に加え、日常生活を補完するコミュニティ交通の導入等の取組を進めてまいります。新年度におきましては、山手地区におきまして、幹線バス路線からコミュニティ交通への転換を住民提案制度により進め、さらに、東神吉地区におきましては、幹線バス路線の見直しを行うなど、より一層地域の実情に即した取組を進めてまいります。また、地域拠点の一つであるJR日岡駅につきましては、トイレを含めた駅舎等のリニューアルの可能性について検討してまいります。

 幹線道路の整備につきましては、平野神野線及び中津水足線、神吉中津線の早期完了に向けた取組を計画的かつ着実に推進してまいります。また、兵庫県が事業主体となる、国道2号線における平野工区の整備及び加古川橋梁(きょうりょう)の架け替え、さらには、東播磨道(北工区)の整備についても、これまで以上に県と連携しながら取り組んでまいります。さらに、播磨臨海地域道路につきましては、現在、国において、概略ルート及び構造等が検討されており、当該道路により、まちづくり全般に大きな効果が期待されることから、周辺の土地利用計画や幹線道路ネットワークの再編など、国の進捗に応じ、機動的に対応してまいります。また、県において、JR東加古川駅付近の連続立体交差事業の調査が進められることから、本市といたしましても、県及び鉄道事業者と緊密に連携し、課題となっている緊急対策踏切の解消をはじめ、周辺道路や土地利用計画を見直すことで、副都心にふさわしい魅力あるまちづくりが進められるよう検討してまいります。

 公園の整備につきましては、とりわけ、「日岡山公園周辺地区まちづくり構想」に基づき、西之山水足線の新設にあわせた駐車場の整備に向けた取組を進めるとともに、引き続き、財政状況を踏まえた公園整備を検討してまいります。

 また、市営住宅につきましては、施設の老朽化や交通の利便性が劣ることなどにより、入居率が低下し、空き住戸の割合が拡大しております。そのため、市営住宅の需要予測を的確に把握し、「住生活基本計画」の見直しに向けた基礎調査等を進めてまいります。加えて、空き家対策につきましては、「空家等対策計画」に基づく空き家所有者等への啓発を進めるとともに、老朽危険空き家に対する除却補助制度の拡大などに取り組んでまいります。

 一方、全国各地においては、集中豪雨による洪水被害が発生していることから、本市におきましては、市民の皆さまが河川状況を確認し、主体的に避難等が行えるよう、主要な水防箇所等に監視カメラを設置し、効果的に情報を発信してまいります。

 次に、水道事業につきましては、経営基盤の強化など、将来の事業運営の方向性を示す、新たな「水道ビジョン」を策定するとともに、施設の耐震化や基幹管路の更新を進めてまいります。

 また、下水道事業につきましては、施設の継続的・安定的な運営や効率的な維持管理に加え、災害リスク等に対応できるよう、新たな「下水道ビジョン」を策定し、さらに、未普及エリアの早期解消をめざし、官民連携手法の活用にも取り組んでまいります。また、両ビジョンとあわせて策定する水道及び下水道に係る「アセットマネジメント」に基づき、将来にわたり持続可能な事業経営を行ってまいります。

6.【まちづくりの進め方】

 最後に、まちづくりの進め方についてです。

 本市では、「子育て世代に選ばれるまち」をめざし、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づく様々な事業を展開しているところです。新年度におきましては、市内外を問わず多くの人に、これらの取組の魅力を分かりやすくお伝えし、移住や定住につなげていくことが重要であると考えております。そこで、進学や就職、結婚、さらには住居の選択などのタイミングにおいて、新規事業と既存事業を効果的に盛り込んだ本市の取組を大々的に発信する「『結婚から子育てまで“ぐうっと”応援するまち』ブランディング緊急プロジェクト」を展開してまいります。また、昨年に制作したシティプロモーション映画「36.8℃(サンジュウロクドハチブ)」の上映イベントやロケ地めぐり事業を実施するとともに、高校生をはじめとする市民の皆さまにご協力をいただきながら、ふるさと意識のさらなる醸成に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

 また、協働によるまちづくりを、より一層推進するにあたり、「協働のまちづくり基本方針」を策定し、様々な方からのご意見をいただきながら、町内会、NPO、事業者、行政などの主体がそれぞれの特徴を生かしたまちづくりを進めてまいります。その一つの方策である「協働のまちづくり推進事業補助金」につきましては、地域のために多様な主体と連携して取り組む事業の支援を強化してまいります。同じく、「かこがわウェルピーポイント制度」につきましては、子どもや教育に関する活動について対象の拡充を図ってまいります。個人での登録に加え、団体での登録を可能とすることで、社会活動に取り組む市民を増やしてまいります。さらに、民間事業者が創設を予定している民間ポイント制度との連携により、ポイント交換先の拡大及び地域活性化を図ってまいります。

 一方、公共施設等の老朽化対策につきましては、「公共施設等総合管理計画」に基づく長寿命化や統廃合・複合化による財政負担の軽減・平準化、さらには、最適な機能配置の実現に向けて取り組んでいるところです。今後は、本市が保有する公共施設の利用状況や管理運営コスト等の状況をまとめた「施設カルテ」を基に、各施設の在り方を検討してまいります。また、加古川東市民病院跡地につきましては、昨年7月に改定した跡地活用計画に基づき、東加古川公民館と東加古川子育てプラザの複合施設及び東消防署を整備する事業者の選定に向けた準備等に取り組んでまいります。

 広域的な都市間連携につきましては、東播臨海広域行政協議会を構成する高砂市、稲美町、播磨町との連携のもと、4年後のごみ処理の広域化に向けた新施設の整備を着実に進めてまいります。また、加古川西市民病院跡地での休日昼間及び夜間の医療体制の充実を図るため、新施設の早期開設に向けて、関係機関等との具体的な協議を行ってまいります。さらに、8市8町で構成する播磨圏域連携中枢都市圏においては、他市町との連携による効果的な事業の展開を進めてまいります。

おわりに

 以上、平成30年度の市政運営の方針と基本的な考え方を申し述べてまいりました。社会情勢が目まぐるしく変化する中にあっても、変わることのない地域の歴史と伝統、そして、新たに生み出される魅力など、本市には未来を拓(ひら)く力があると強く信じています。そのためにも、市民の皆さまが本市に愛着と誇りを持ち続け、さらには、地域力との相乗効果により、誰もが「訪れたい」「住んでみたい」「住み続けたい」と思えるまちづくりが進められるよう、全力で取り組んでまいります。議員各位並びに市民の皆さまの一層のご理解、ご協力をお願い申しあげ、平成30年度の施政方針といたします。

(注意)当日の演説と表現その他に若干の違いがあることをご了承ください。

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