播州印南郡報恩律寺七堂図(参詣曼荼羅図)/市指定文化財

名称
播州印南郡報恩律寺七堂図(参詣曼荼羅図)(ばんしゅういんなみぐんほうおんりつじしちどうず(さんけいまんだらず))
数量
1幅
附(つけたり)
勧進状3巻
種類
絵画
材質及び技法
紙本著色、軸装
寸法
縦 144.0センチ、横 127.0センチ
時代
戦国時代期 永禄11(1568)年2月15日
指定年月日
平成12(2000)年4月13日 市指定
所有者及び所在地
所有者 報恩寺
所在地 平荘町山角466番地の1 報恩寺
解説
室町時代後期に描かれた報恩寺の伽藍図です。その形態とほぼ同時代の3巻の勧進状が伝わっていることから参詣曼荼羅図ということもできます。
本図は、かなり損傷が進んでいましたが、平成7(1995)年までに同寺によって修理がなされ、良好な状態にあります。修理前の裏書には「播州印南郡報恩律寺七堂図 永禄十一年二月十五日 勧進道叡」とあり、この裏書により本図の制作時期が明らかとなっています。
全体に簡素な描き方で、次代に流行する参詣曼荼羅図のような華やかさは見られません。本堂の周りには、高野聖(こうやひじり)のような2人の参詣者、犬を追う男女の童子、寺僧らしき2人、箒で掃く寺僧、花を捧げる人物、傘をさす人物が、さらに、鳥居付近には高野聖のような3人を招く人物が描かれ、13人の人物の姿が見えます。何かの物語によっているのかもしれません。
本堂を中心に、向って左に阿弥陀堂を描き、画面上には左から五輪塔(後宇多院殿御廟石)、経蔵、弁天堂(弁財天)が続き、その下の回廊が舞台のような建物へ続いていて、付近の池の中には報恩寺の中興證賢上人の名を冠した證賢石と思われる岩も見えます。画面下の楼門の左には浴室、右には三重塔があります。画面右には若一権現が描かれ、本殿(若一権現)、その下に建物を挟み、拝殿があり、さらにその下に門(門客人)から鳥居までの道が描かれています。建物の屋根は、寺のほとんどのが瓦葺なのに対し、神社は桧皮葺や藁葺のようです。また、画面の中は、稚拙なすやり霞や雲、さらに松や梅の木、竹藪によって区切られています。
現在の本堂がある高台から街道沿いの低地にかけて、当時の伽藍のようすが描かれていて、本堂などの主要伽藍は、現在の庫裡下の駐車場から平荘小学校にかけて広がっていたようです。現在の平之荘神社の前身である若一権現とともに、室町時代後期の報恩寺伽藍復興のようすを知る上で興味深い資料です。
同寺は、『西大寺末寺帳』にも載る中世の真言律宗寺院で、中世文書を中心に貴重な古文書を所蔵する寺院でもある。これらの古文書の中には、南北朝時代から室町時代までの播磨国守護であった赤松惣領家からの寺領安堵に関わる古文書や、勧進活動に伴う勧進状なども含まれ、中世の寺院の姿を知る上でも重要な寺院です。
報恩寺の寺伝については、寺記のほか室町時代の勧進状などにも記されています。 それぞれ内容が異なりますが、概ね、慈心が開基で、後宇多院の頃(13世紀末期)に証賢上人らが開創、または再興し、本尊十一面観音と四天王などを安置し、また、若一王子権現を勧請し、「印南山」の扁額は、将軍足利義満から賜ったということになっています。
鎌倉末期から南北朝時代にかけて、かなり堂舎の整備が行われたようで、境内には、殺生禁断の標塔である十三重層塔をはじめ西大寺系の五輪塔など、律宗寺院としての信仰を示す鎌倉時代から室町時代までの多くの石造品が所在していることからも、かなりの寺勢があったことが知れます。
その後、同寺代々の事績を記す 「播州印南郡印南山報恩寺之記」によると、永正2(1505)年には惣堂坊舎と鎮守社を悉く焼失しています。その後、天文元(1532)年の「播州印南郡印南山報恩寺旧記覚」には、本堂、塔堂、薬師堂、鐘楼、鎮守弁財天、若王子権現が記されており、これらは旧伽藍を記したものかもしれません。 そして、翌天文2(1533)年には、沙門十縁らの勧進状があり、本格的な伽藍の再興計画が立てられています。同寺には6帖の奉加帳が伝えられているが、このうち第四帖から第五帖が、室町時代後期の16世紀のものと思われ、近郷の土豪や関係寺院の僧侶の協力により、再興が図られていたことがわかり、室町時代後期の報恩寺復興のようすを窺い知ることができます。
江戸時代になって、寛永20(1643)年に本堂、 正保4(1647)年に鐘楼が完成しています。 したがって、本図が制作されたときは、描かれているような伽藍は整っていたとは考えられず、本図は、参詣者を募る参詣曼荼羅図というよりは、伽藍復興の願いを込め勧進のために用いられたものと解釈すべきでしょう。
参詣曼荼羅図の多くは、桃山時代から江戸時代初期を中心として、民衆の社寺参詣の姿を描いた絵図で、参詣者を描いた境内図です。しかも、すべての堂舎を描くのではなく、 その社寺に参詣すれば必ず拝すべき場所に重点を置いて、信仰対象がくまなく取り入れられています。本図はこのような参詣図が大成する直前のもので、参詣曼荼羅図の成立過程を考える上でも興味深いものです。
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更新日:2025年04月30日