広報かこがわ2月号
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 毎年、小学6年生と中学3年生を対象に行われる全国学力・学習状況調査の結果を分析する中で、加古川市の児童生徒は主に思考力・判断力・表現力などが問われる問題を苦手とする傾向にあることが分かりました。 これらを改善するため、東京大学大学院の藤村宣之教授の監修の下、平成30年度から市立小・中学校の全教科で「協同的探究学習」に基づく授業づくりを開始。平岡南小学校と中部中学校がパイロット校として先進的な授業づくりの研究を進め、その成果を各校にフィードバックする流れで協同的探究学習を推進しています。「協同的探究学習」導入の背景 協同的探究学習では「できる学力」と「わかる学力」を両輪に、バランスの取れた学力と学習に取り組む意欲を育みます。「できる学力」とは、算数の「九九」や国語の「漢字」など繰り返し学習することで身に付く、主に基礎的・基本的な内容や方法などに当たるものです。 一方「わかる学力」とは、主に思考力・判断力・表現力に当たります。例えば、理科の実験でなぜそのような結果が出たのかを実験の過程を振り返りながら考えたり、歴史の授業でさまざまな事件が起きた要因を時代背景から探ったりと、問題に向き合い、答えを導き出した理由や根拠などを自分の言葉や文章で発信する力を指します。 協同的探究学習の研究を始めた理由は。 AI(人工知能)が台頭する将来、人間にしかできない考える力を高める必要性を感じたからで、子どもたちが持つ知識と豊かな発想を結び付ける授業の研究を始めました。加古川の子どもに対する印象は。 自分の考えを素直に表現できる子どもが多い印象です。協同的探究学習を受け入れる環境が整っていると思うので、授業を通して多様な思考力を高めてほしいですね。仲間を大事にする意識も非常に高いと感じます。互いの意見を聞き、認め合うことで、「今のままの自分でいい」と思う自己肯定感が高まり自信を持てるようになります。それが「わかる学力」の向上にもつながります。「わかる学力」を伸ばすために家庭でできることは。 「わかる学力」は家庭での生活や読書、遊びの中でも育てることができます。今日は学校で何を学んだのか、どのようなことを考えて過ごしたのかなど、子どもとじっくり対話する時間を持つことが大切です。くわしくは各家庭に配布した「家庭でチャレンジ 子どものわかる学力の育成をめざして」を参考にしてください。「できる学力」と「わかる学力」 協同的探究学習は、最初に答えが一つに決まった問題を児童生徒に示すのではなく、一人一人の多様な考えや意見を聞くことから始まります。授業を通して、他者のさまざまな意見と自分が持っている知識を組み合わせることで、柔軟に考える力や自分の考えを深める力を育んでいきます。また、互いの意見を尊重することは児童生徒の自己肯定感を高め、良い人間関係(クラス)をつくることにもつながります。多角的に考える力が身に付く監修者に聞く!東京大学大学院教育学研究科 藤村 宣之 教授できる学力できることによる学習意欲の向上順序立てた学習、適用学習、個に応じた指導など学力の両輪学力の両輪わかる学力・根拠や理由の説明・知識の関連付け などわかることによる学習意欲の向上協同的探究学習・計算スキル・漢字練習 など答えや解法が決まった定型問題の解決多様な考えや解法が可能な非定型問題の解決指導法全国でも先進的な取り組み成果発表市内11中学校中部中学校授業研究フィードバック成果発表市内27小学校平岡南小学校授業研究フィードバック藤村教授アドバイス令和2年2月号3

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